[コメント] ゴジラ FINAL WARS(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
■北村龍平の映画に思うこと
ただ、この大抜擢を、シリーズ最終作にしたのは間違いだったと思う。富山省吾プロデューサーとしては、最終作だからこその英断だったのだろう。しかし最終作となると、自然と内容は『怪獣総進撃』、俳優もオールスターの総出演となる。北村監督にゴジラを撮らせるなら、オリジナルの怪獣を1匹用意し、少ない登場人物で物語を進めるのがいいと思うのだ。
「素人は群像劇はつくるな。一人一人の描き方が薄くなるだけだ。」 そんな言葉がある。この映画を観た時の感想がまさにそれだ。松岡昌宏、菊川怜、ケイン・コスギ、水野真紀、泉谷しげる、それぞれのエピソードが実に薄い。しばらく顔を見せなかった思い出したように登場する。
「北村龍平には自由を与えるな。」 僕は前々からそう、考えている。彼が得意なのは、『Versus』のような山籠もり撮影であり、『ALIVE』のような密室劇なのだ。(正確には、この2作品も退屈な部分があるのだが。)プロデューサーは大金を与えず、「このシーンは無駄だ。」と編集にも文句をつける。北村監督は得意のビッグマウスで「お偉いさんたちは何もわかってねえ。」と文句を言う。そういう環境をつくれば、彼の映画はもっと面白くなるはずだ。
コメントで、「まあ、北村映画ですな」と書いたのは、つまり今までの北村作品と感想は変わらないからだ。アクションはどこかで見たようなもの。ちょくちょく、「おっ。」と思わせる演出もあるのだが、無駄に長くて、つまらないシーンに埋もれてしまっている。間が悪い。ドラマもつまらない。小美人も全然美人に感じなかったですねえ。前回と同じ役者が演じてるのに……。やっぱり北村監督は女性を撮るのが苦手なのかな。いや、それでいいのだ。ジョン・カーペンターの映画が、女性に魅力がなくても面白いのと同じだ。開き直って男臭い映画をつくってればいいのである。
なんにしろ、彼はよく頑張ったと思う。怪獣のバトルも、高速道路でのアクションも、(どっかで見たような映像ばかりだし、ちょっと目が疲れるところもあるが)迫力は充分である。
大槻教授と韮澤編集長と松尾貴史が、UFOについて討論するところなんか、笑った笑った。三人ともテレビの姿そのままですな。大槻教授と韮澤編集長は、役者じゃないんだから当然か。
■ゴジラシリーズの窮屈さ
怪獣以外のところで頑張ってどうするんだ、って?それに、原爆の話がほとんど出てこないじゃないか?僕ははっきり言って、そんなことはどうだっていいと思っている。正直、ずっと前から、窮屈さを感じていたのだ。
「金子ゴジラはよかったなあ」と言っても、結局それはファンの間だけで言われている事なのだ。今のゴジラは、一部の人間に向けてつくられたものなのである。
実際、映画を観ても平成版ゴジラは、オルガやメガギラスといった新怪獣は魅力がうすく、モスラ、ギドラといった古くからいる怪獣が繰り返し登場する。すでにキャラクターができあがった怪獣が再利用されてばかりなのだ。つまり「やっぱりモスラはこうでなくちゃ。」「ギドラは何度観てもかっこいいなあ。」というマニアを喜ばせるための映画なのである。これではインターネットや同人誌で見る二次創作と何も変わらないではないか。「こういう合成画像をつくりました。」「ゴジラとキングギドラのこういう勝負が観たい!」と何が違うのか。
まあ、一般受けばかりを狙っても、平凡な作品になってしまうこと認めよう。僕も「大ヒット作!」「今、話題の……」と言われる作品が、何の新鮮味もない内容で、つまらなかった経験はある。しかしゴジラの場合は逆な気がする。「こんなのはゴジラじゃない。」という批判や、「ゴジラはこうあるべきだ。」という主張がかえって、作品の面白さを削いでいるのではないだろうか。
北村監督が抜擢されたとき、怪獣作家でない彼に、どこまでゴジラが描けるのか、ファンの間では賛否両論となったが、僕は賛成の立場だ。たとえ抜擢されたのが、三池崇史だろうが、北野武だろうが、楽しみにしただろう。新しい監督を取り入れる事により、ゴジラに新しい風を吹き込むという富山プロデューサーの目的は達成された思う。
宣伝になるが、シネスケで僕は、「ゴジラとは何か?」というレビューをいくつか書いている。これは必ずしも「ゴジラはこうあるべきだ。」という僕なりのゴジラ像を、説いているわけではない。それぞれ監督がどのようなゴジラ像を抱いているのか、それぞれの作品から、読み取ろうというのが目的だ。
監督の数だけ、観客の数だけ、ゴジラ像があるのだ。監督が思うまま映画をつくればいいのである。
ただ、くどいようだが、この大抜擢を、最終作ですべきではなかった。
「これですべて終わったのね。」「いや、これから始まるんだ。新しい戦いが。」
こういう試みは、シリーズの方向転換の第一歩としたほうがよかっただろう。
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