[コメント] ベルヴィル・ランデブー(2002/仏=ベルギー=カナダ=英)
夢と寛容の都としての誇りを喪い、過食症と無慈悲の街へと成り果てた”Bellevill”に送り届けられた、皮肉満載、笑いも満載、これぞ新しい「自由の女神」だ、さぁ、有り難く受け取りやがれ!
映画の中で使用された映画はジャック・タチの『のんき大将 脱線の巻』で、フランスの片田舎ののんきな郵便配達員が、ニュース映画で観た「アメリカ式郵便配達」に大きく感化され、合理化・スピード化を図った途端、勢い余って川にドボンと落ちてしまう、正にそのシーンだったんだが、こんなことからも作者がアメリカに抱く複雑な感情、可愛さ余って憎さ100倍と云った所か、が窺えて興味深い。
根底に愛のあるアイロニー、ブラックユーモアって、それがどんなに痛烈でも、居丈高にも嫌味にもならない。逆に言うと、皮肉も言い合えない様じゃ、本当の「友人」とは云えないんじゃないか、みたいな。日本映画にも欲しいよなぁ、この余裕。
勿論、そんなにまで深読みせずとも、本作は、映画として、アニメとして純粋に素晴らしい出来栄えを誇る。殆ど台詞に頼らず、音と画だけで、これだけの長編を語りきってしまうシルヴァン・ショメの手腕には、ひたすら驚かされた。
人物や静物のある部分を極端に誇張して描くことで生まれるアニメ特有の「差異」、バランスの歪みを、ごまかすのではなく、ありのままの現実として捉えて笑いやシュールさに転ずる、という手法も面白い。身長に釣りあってないベッドだとか、鉄道架線の所為で捩れた家だとか、蒸気船と人と港の高さと幅のバランスだとか、今まで見たこと無い面白さだ。
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