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[コメント] 青いパパイヤの香り(1993/仏=ベトナム)

鮮やかな、ウェットなそしてエロティックな映像に時を忘れる。つかの間の平穏な時代の仏領インドシナ、時折挿入されるジェット機の轟音は何を意味するか。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アジアンテイストの家具やインテリアの売上は爆発的なものがあります。(私はその手の業界です)

日本の文化と似ているがどこか徹底的に違う「匂い」を持つこの国の湿度が良く伝わってきた映像でした。湿度の高さが不快感でなく、色鮮やかな植物、花に混じり石作りの建物が冷たさを伝えてくれたのでしょう。

とても綺麗な映像を撮る監督さんですね。何か現実離れした、今はもう無きものをイメージを探りながら撮っているような感じをうけました。だから逆に無駄な台詞は必要なかったのでしょうね。

そう、今ではもう既に無いものなのかもしれません。

日本軍が去り、フランス軍が舞い戻ってきた時代のインドシナ。日本人が白人と五分に戦ったのを見ていた彼等は遂に立ちあがり、フランス軍を駆逐する。しかし、最強のアメリカの介入により、国土も民族も崩壊・分裂していく運命が待っている。

こんな政治的な状況は一切描かれていない。ベトナムの映画であの戦争が描かれていない事に軽いショックを受けた。そう、これは一般の人々の普通の生活を淡々と描いた作品なのですね。ベトコンではないベトナム人をはじめて知ったような何とも恥ずかしい、気まずいショック。

では、作品に時折挿入された、あの意味の無いジェット機の轟音は何を意味するのか?

上記の状況を何か暗示的に象徴しているのだろうか?それならばそれで私はもう一度この作品を見直す必要があるかもしれない。それとも、あの時期はサイゴンの上空をフランスだかアメリカだとかの戦闘機が我が物顔で飛行するのは日常的なあたりまえの背景として、効果音に使用したのだろうか?

いずれにしてもこの作品は単なる恋愛成就だけを描いている訳でない事だけは確かである。舞台となったサイゴン市は今は北ベトナムの指導者の名をとってホーチミン市と名を変えている。

そう、今ではもう既に無いサイゴンの古き良き時代を監督は想い描いていたのでしょう。サイゴン陥落時にまで彼等夫婦は生き延びていられたのでしょうか?文化人として旧支配者フランスの音楽学校を卒業した夫は無事にベトナムから脱出できたのでしょうか?

映画ではそういった事は何も描かれていませんでした。しかし、映画のラストでムイからアップしたカメラは不気味な表情をした石像(仏像)を捉えつづけました。不安感を煽るような不気味な音楽とともに・・・

この唐突に終わる不気味なラストはいったい何を問いかけているのでしょうか?

(評価:★4)

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