[コメント] シチリア!(1998/仏=伊)
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上記は細川晋さんの解説による。
港、列車内、母との再会、研屋の4パートから成る。港では地元労働者と戯れに会話。彼はオレンジは売れず給料は現物支給とボヤく。主人公がアメリカ帰りと云うのは、原作ではこれはその場の云い逃れらしい(渋谷哲也氏の講演による。実際はイタリア放浪からの帰省)。列車内もシチリアの噂噺。「喰いつめものは危険だ、何でもやらかす」「どこでも憲兵はシチリア人だ」憲兵は薄給の仕事ということなのだろう。シラケーサ、海際の駅、不思議な無音状態、山には鳥が鳴く。
母親を新居に尋ねる件が長尺で。母はニシンがあるよと焼く。冬はニシン、夏はピーマン。貧しい食事の回想。踏切の番小屋住まい、貧乏人の食事はカタツムリ、殻から吸い出した。叔父さんは信仰のある社会主義者で祭りの行列も仕切った。パパは駆落ちした。お産でも泣くだけだった。家に曲馬団の女連れ込んで浮気したから追い出した。母も浮気したと語る。硫黄鉱山の工夫。渋谷氏によれば原作では主人公は心の中で「メス牛め」と母をののしるのだが映画は削除。これは倫理的なものだろうと語っておられた。この母親がもう一度見たくて映画館に来た、とディスカッションで述べている客がいた。いい女優さんだった。出演は地元の素人劇団員の由。モノクロは陰影深く老人の表情を捉えている。
ラストは滑稽で、石段に髭面の研屋がいる。「ナイフもハサミも見たことがない、剣か大砲を研ぐ」主人公がナイフを出すと自転車漕いで、仕掛けで回る円盤にナイフかざして研ぐ。ハサミ研ぎとはこうするのだと目からうろこだった。単位は忘れたが主人公が8渡すと三等分できないと唄う。2返してこれならパン2、ワイン2、税金2だと喜びその場でクルリと一回転、主人公と滑稽な対話を交わす。最後は母音だけ連呼するらしい。細川晋さんの解説によれば、「社会主義の実現を願う研ぎ師」とある。母親との深刻な対話のあと、このコメディで映画を終える組合せは画期的で、普通のプログラムピクチャーなら誰もが簡単に失敗作の烙印を押すところだろう。何でもありを可能にした作家だと思わされた。
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