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[コメント] アンダルシアの犬(1928/仏)

プロローグはブニュエルがカミソリを研ぐショットから。バルコニーに出て月を見る。満月に細い霞のような雲がかかるアニメーション。次に有名な、女の眼球にカミソリをあてるように見せかけたショットが来るが、これは満月と雲のショットとのマッチカットだ。
ゑぎ

 変な恰好の男性−ピエール・バチェフが自転車に乗ってくる。修道士か。胸に小さな箱を持っている。ゆっくりしたディゾルブ繋ぎ。この抒情的なディゾルブ処理は全編要所で出てくる。クロスカッティングでアパートの部屋のぽっちゃりした女性−シモーヌ・マルイユ。窓から、路上に倒れた男性バチェフ−を見る。女性は路上に出てきて、男を抱き起こす。死んでいるのか。しかし、アパートの部屋には、男性が蘇生している。男性の掌から蟻が出て来るイメージ。女性の腋毛に繋ぐマッチカット。あるいは、ウニ。唐突に路上の手首の俯瞰。ステッキで手首をつつくマニッシュな女性。手首を箱に入れる。取り巻く群衆。窓からそれを見る男−バチェフと女−マルイユ。このアパートの窓を使った俯瞰仰角も効果的な演出だと思う。マニッシュな女性は車に轢かれる。すると、アパートの部屋で男はいきなり欲情したのか、女の胸を触り、詰め寄るが、女に逃げられ、追いかけ合いに。大きな三角のラケットを振り上げる女。男が紐を引っぱりだすと、グランドピアノ2台に死んだロバが乗っていて、修道士2人も床を引きずられる(修道士の右側はダリか)。こゝは可笑しい。この部分が本作の白眉だろう。

 こゝまでの前半部分と、この後の後半部分では、かなりぶっ飛び加減が大人しくなったように私には感じられた。部屋の壁の蛾の紋様、男の口髭と女の腋毛の交換ぐらいか。終盤の浜辺、海岸の場面で序盤の小さな箱が再登場するのは落ち着きがいいが、常識的でもある。ラスト、暗転後に出てくるスチル写真は今見てもオシャレと思う。

(評価:★3)

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