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[コメント] 暖流(1957/日)

門が開いて、病院の塔へ寄って行くクレーン撮影?斜め上へゆっくりと上昇移動する。このショットにクレジット。エンディングもこの逆回転のようなショットで締められるという落ち着きの良い構成だが、本編は全然落ち着いていない。
ゑぎ

 増村保造の初期作だが、もう既に彼の特徴が決定的に現われている、セワしない映画だが、メッチャ面白い。まずは、主要人物の造型が皆ぶっ飛んでいる。主要人物とは、根上淳左幸子野添ひとみ村田知栄子船越英二品川隆二の6人を指しているが、中でもやはり左幸子のサイコパスというかパラノイアの造型が抜きんでて面白いのだ。いや普通、これだけ突出した人物がいると、他の演者はその毒にアテられて霞んでしまいそうなものだが、そうはなっていない、皆、それぞれ強烈な個性を見せつけるところも凄い。いやそれはとりもなおさず、増村の演出が、誰よりも勝っている、ということだろう。

 いろんなところで書かれているとは思うけれど、ちょっと例をあげておこう。左幸子の場面で最高なのは、やっぱり東京駅?の改札をはさんで、根上に「情婦でも2号でもいいわ!待ってるわ!」と叫ぶシーンだろう。その直前の、改札前で待ち伏せしていた左が、根上にぶち当たるように出現するのもショッキングなショットで、このような速度のある演出が左のキャラを支えている。野添が、左を訪ねた場面で、左一人がラーメンを食べる際の食べ方なんかも雑な感じが絶妙にいいのだ。序盤で左が野添に云う「恋するってスレッカラシになること」という科白がきちんと画面で体現されている。また、こんなキャラの左が、こんなエンディングをむかえる、というのも本作の素晴らしい点だと私は思うのだ。

 左幸子の次に続くキャラということで云えば、やっぱり船越か。彼が唄う二つの歌「メケメケハモハモバッキャロー!」と「ぼくはきみがすき〜」はいったい何なんだろう。特に後者を義母の村田知栄子と一緒に唄う場面は村田も含めてふざけ過ぎだろう。こういう場面を面白がれるかどうかは、観客によるとは思う。あとは、根上の武骨な押しの強さ、野添の一人泰然としたトボケタ味も強烈な個性だが、単に堅物なだけかに思えた品川が、野添と婚約解消をするシーンで見せる人間性の欠如の様も捨てがたいのだ。

 さて画面造型では、屋内シーンでも人物を縦(前後)に並べて、ディープフォーカスで見せるショットが目立つ。特に後半になって連打する。真ん中に野添、右奥に根上、左奥に村田、と三角に配置し、これを完全なパンフォーカスで抜いたショットなんかは、極端な画面だろう。縦への志向は、ラスト近く、根上と野添が二人、鎌倉の浜辺を歩き会話する場面でも指摘できる。左手前に根上を置き、画面右に、野添が奥へ向かって小さくなるまで走っていくのを捉えたショット。

#備忘でその他配役等を記述します。

・船越と野添の父親で病院の院長−小川虎之助。その妻が村田。村田は後妻か。船越には義母。船越の妻は清水谷薫

・病院の事務長は潮万太郎。その甥は杉田康。部長クラスの医者で大山健二小杉光史が出て来るが、大山は中立派か。潮や小杉と共に悪だくみをする医師に春本富士夫伊東光一高村栄一。看護婦長の村田扶実子、眼鏡とメイクで誰か分からない。看護婦の中に叶順子

・船越が雇った?弁護士に星ひかる。大阪商人で病院へ資金援助をしてくれる山茶花究

丸山明宏がテレビ局のセットの中で一曲唄う。

・病院を解雇されたメンバーのアジトの場面に市田ひろみがいたと思う。

(評価:★4)

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