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[コメント] マシニスト(2004/スペイン)

物語よりは演出を楽しむ作品でしょう。それを取り違えると今ひとつの作品になってしまいます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 クリスチャン=ベールの激痩せぶりが話題となった作品で、役者というのは本当に凄いものだと思わされる。ベールはなんと30キロものダイエットを刊行。ここに登場するのはほとんど骨と皮ばかりである(一年後の『バットマン・ビギンズ』(2005)ではいきなりマッチョになってたのも凄く、この二作を見比べると大変面白い)。

 その特異なキャラクタ性も良いが、特筆すべきは本作の雰囲気作りであろう。強迫観念を受けて精神が壊れていく中、どんどん周囲のリアリティが崩れていく過程は見事。  ただ、この手の作り方だと、自然オチは観てる側には分かってしまうため、ラストの衝撃は「な〜んだ」で終わってしまうのがちょっと残念。これだけ見え見えの作り方をしてたら分かってしまうよ。観てる側はそれを越える衝撃を求めてる訳だから、もう一押し欲しかった。このラストで全て損してる。

 ただ、それは確かなんだけど、それにしては物語が単純すぎるような気がする。このラストに持って行くにしては、演出がくどすぎるのだ。

 ではもうちょっと考えてみたい。

 仮にこのラストが既知のものだったとしたらどうか?と考えてみる。特に主人公トレバーが、本当はアイバンなどという人物はおらず、全て行っている事は自分であると気付いていたとしたら。

 すると、彼が最後まで解けなかったハングマンゲームの答えは、実は彼自身が解きたくなかったから、敢えて間違った答えを書き込み続けたのかも知れない。と考えることが出来るだろう。

 これは心理学用語で言う所の「否認」と呼ばれるもの。例えば「あなたはガンで、一月後に必ず死ぬ」と言われた時、患者の示す反応は「私にそんなことが起こるはずはない」というものになる。彼がその否認状態に陥っているとすれば、それを認めないように努力している過程が映されていたと言うことになる。更に観ている側にもそれが分かっているなら、それがもの凄くもどかしく感じさせる。

 仮にそれが目的だと考えるのならば、この細かい演出を楽しむために本作はある。観てる側がイライラする。それで良いのでは無かろうか?

(評価:★3)

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