[コメント] ブレードランナー(1982/米)
洋の東西が混在する汚れきった街に燃え上がる炎の点滅で、再びこの映画の世界へと一気に引き込まれる。このカオスの街で、レプリカントたちはいかに美しい生を演じきったことだろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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特にルトガー・ハウアーである。擬似生命でありながら、いや、そうであるがゆえに彼は卑小な人間たちの持たぬ美しい属性を持たされている。彼の前ではハリソン・フォードは追う猟犬から、追われる野ウサギへと身を落とされてしまう。雨の街に吠えるハウアーは誇り高い狼だ。
彼もそうだが、短い生への執着は血に対するエキセントリックな反応として現われる。死にあたっておのれの撃たれた腹の血を確認するレプリカント。ハウアーが仲間の致死の傷の血を舐めるように顔に塗りつけるシーンは、ひどくエロチックに見えて仕方がない。
ハウアーはつねにおのれの死期を知りたがっていた。そして、フォードを追い詰めた時に死期が間近だと悟ったハウアーは、フォードを死の淵から救ってやると同時に、彼が遥かな外宇宙で観た地獄を語りつつ絶命する。死から逃れようとあがき続けたハウアーの、だからこそ威厳ある死であった。
この作品をサイバーパンクの先駆のように呼ぶのは、どうも好きではない。もっと生命の醜悪さと美しさを2019年のロスアンゼルスに活写した映画と見たい。なお、今回観たのは「最終版」だったので、フォードと愛するレプリカントの逃避行へ赴くラストシーンが「匂わせる」程度の描写で終わっていたのだが、このへんは好きずきか。
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