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[コメント] アビエイター(2004/米=日=独)

真っ直ぐ夢へと向かうために金と権力の汚い世界にも土足で踏み込む。純粋であり続けようとするが故に、‘クリーン’にはなれない耐え難いジレンマ。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ハワード・ヒューズについては名前以上の事をほとんど知らなかったので、近年で言う所の強迫性障害を抱え続けた挙句、一時は引きこもり生活にまで陥るという展開にはちょっと驚いた。展開として以上に撮り方としてそういうヒューズの精神的なモロさが前面に描かれている。アカデミー受賞逃しが話題となっていたから、てっきり「栄光と苦悩の生涯」みたいな安易なハリウッド伝記映画なのだとばかり思っていたが、なかなか独自の色合いを感じる。撮りたいものを撮るというクリエイターとしてのプライドはさすがのもの。とは言え、これでアカデミーを狙っていたのなら、商売人の眼は無いとも言える。

映画としては自分の好きな所と嫌いな所が混在していた。結論を言うと、自身の身と心をも崩壊させながら夢に向かってひたすら疾走するというテーマに引かれるものを感じつつも、実際引き付けられるに至らなかったのだ。理由はヒューズという主人公があまりによそよそしい事。ヒューズ自体の描き方はあれでいいと思うし、レオナルド・ディカプリオも頑張ってはいるのだが、周りの登場人物たちとのドラマ性が希薄なのが辛い。大惨事を引き起こしても、引きこもり生活に陥っても、女や部下に見捨てられたりなどせず、敵にさえも見限られない。かと言って、苦しみ悶えるヒューズの心に押し入ろうとする者もおらず、周りは傍観者ばかり。3時間追い続けるだけの取っ掛かりが何処にも見当たらず、ヒューズの夢は最後まで他人立ち入り無用の夢で終わってしまった。

余談。天才的発想と行動力の持ち主が過保護な母親の言いつけから逃れられない人間であったという設定はちょっと『アレキサンダー』と被る印象。見当違いの覚悟で言えば、公聴会で糾弾される側であるはずのヒューズが「お前らこそ悪党だ」とばかりに反撃を繰り広げる姿などはどちらかと言うと、オリバー・ストーン映画のようで、本来の2人の関係(大学での講師と生徒)からすると、やや奇妙に思えた。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] プロキオン14[*]

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