[コメント] アビエイター(2004/米=日=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『タクドラ』、『レイジング・ブル』、『キング・オブ・コメディ』、そして『アビエイター』―― 昔からスコセッシが描く主人公がたまらなく好きだ。ともすれば間違っているのに、自分を信じきった挙句どこまでも疾駆する。血を流し、傷つき、激痛にのた打ち回りながら、それでも憑かれたように突っ走っては、ついにその叫びがこの世界に一つの波紋を広げていく。
それは自分が見えない男の独り善がりに過ぎないのかもしれない。世間からすれば、哀しい男に過ぎないのかもしれない。
富と母の溺愛が成した無菌状態の羊水で育った少年が、金塊で固めた井戸ごと大海に飛び込んでは、猛る波さえ買収していく。媚びず、退かず、省みず。だが、本当のドラマは、彼が死にかけた時に始まった。自らの肉体とともに夢がズタズタにされた瞬間、誰もが彼を見てこう思った――もういいだろう?だが、本人だけがそう思わない。一分たりとも認めない。ここだ。その瞬間、彼の中に駄々を捏ねる子供の如き幼く純粋な衝動と不屈がまだギラギラ光っているのを見つけ、胸が熱くなる。
でも、彼は超人じゃない。止まらない心だが、止まれないのは、止まってしまっては壊れてしまうからだ。まるで免疫不全、疾走は一方で感染を恐れての逃走なのだ。なのに、ひとたび人前に出れば、まして敵を前にすれば、ムキになって大口を叩き、結果誰より自分を追い詰めていく。そして、引き篭もり、まるで赤子のように正体もなくす。震える。
そんな男がなおも飛行機を飛ばそうとするのだ。最初は小さな飛行機だった。一度はその夢に墜落し、死にかけた。でも、認めない。敗北を、敗北を認めることを迫る周囲や世間の声、権力の圧力、そして己の限界に屈する己を認めない。そして、飛行機を飛ばそうとする。ただし、今度は化け物みたいな飛行機だ。それも今度は一人じゃない。今まで巻き込んできた誰も彼もを同乗させて―― 飛べ!心から想った。
間違っている?誰が決める?誰にわかる?屈するな。やり続けろ、ただもがきながら。そして、見つめろ、目の前を。目の前を真っ直ぐに伸びていく、自分にしか見えない未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
未来への道を
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