[コメント] エレニの旅(2004/ギリシャ=仏=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
テオ・アンゲロプロス監督が先日事故で亡くなってから、やっと新文芸坐で特集が組まれました。
1日二本ずつ過去の作品を顧みます。
そして今回、私が観たのは『こうのとりたちすさんで』とこの作品。
この作品は少し前のキネマ旬報で第2位に選出されていましたが、なかなか観る機会がなかった。
近場のレンタルでも扱っていなくて、やっと拝見することができました。
エレニとはギリシャの俗称なんですね。
エレニは、ロシア革命で住む場所を失った難民が住み着いた場所で育つ少女。
彼女はいいなずけとの結婚を避けて好きな男性と駆け落ちします。
エレニの駆け落ち人生物語。
ロシア革命から第二次世界大戦の終わり間際までを描いた作品ですが、当時のギリシャの状況(よく知らないのですが)を見るにはとても参考になります。
物語もとてもわかりやすくシンプルで、エレニの数奇な人生を丁寧に描いている作品と言えるでしょう。
しかし何よりこの技法です。
相変わらずワンシーンワンカットにこだわり、あらゆるシーンに緊張が走る。
いずれも美しいシーンばかりです。
そしてセットの見事さ。
ギリシャ経済が破たんしたのはこの映画のせいではないか、という仮説が冗談とも思えないほどの予算を使っていることがよくわかります。
何しろ村をセットで建てて(それも広大な面積)その村を水没させるという偉業を成し遂げているんです。
これは観ないとダメです。絶対観ましょう。すごいセット。
テオ・アンゲロプロス監督はこの作品に関連して3部作の予定で戦争を終結させようとしたようですが、志半ばで亡くなってしまいました。
この作品では第二次世界大戦終結までのどん底のエレニを描いていますが、このほかのコンセプトをぜひ知りたかったです。
エレニの子供が政府軍と反乱軍に分かれて戦い、その二人が丘の上で再会するシーンなどは圧倒的です。
こうした予算を気にしないで作れる映画監督がどんどん少なくなっていることを寂しく思いますね。
アメリカの商業主義的な映画ではなくて、歴史とか哲学について真正面から真摯にとらえようとする映画監督の数がどんどん減っています。
それが悲しい。
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