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[コメント] 受取人不明(2001/韓国)

同胞同士で殺し合い、気付いてみると巨大な何ものかに侵食されていた世界。生まれながらにして先の見えない閉塞状況の中に置かれ味わう苦悶。やっと若者達が生きる意義を見出したとき、その意志が負の力となって昇華していくさまが痛ましい。悲しい青春映画だ。
ぽんしゅう

かつて日本でも、60年代に同じテーマを持った優れた作品が数多く製作された。それは、多感な少年期から青年期を、第二次大戦の敗戦とその後の混乱期の中で過ごした映画作家たちによって生み出されていった。

現代の日本映画を担うべき30〜40代の映画作家たちと、韓国の同世代作家たちの決定的な違いをこの作品に見た気がする。パク・チャヌクの、全てを叩き壊し無に還そうとするかのような激しい復讐劇。イ・チャンドンが描き続ける、どうしても人が抗うことができぬ壁と絶望。ポン・ジュノの、時に軽やかに、時に重厚に「時代」をもてあそぶような遊戯感。そして、本能的に「普通であること」を避けようとするキム・ギドクの「罪悪」への意識。

韓国の作家にあって、日本の作家にないもの。それは、「今、映画を撮らなければならない動機と意味」だ。日本の作家たちが「動機と意味」を見つけられず、コミックスや演劇の焼き直しの笑いの中に逃げ込み凡作を連発している間も、韓国の作家たちは血を吐く思いで、フィルムに自己の思いを塗りこめ続けているのだ。韓国の作家たちが、世界中の映画界を席捲する時代はまだしばらく続くであろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)KEI[*] TOMIMORI[*] sawa:38[*] セント[*]

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