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[コメント] シリアル・キラー アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女(2003/英=米)

真相は彼女にしか分からない。しかし監督のニック・ブルームフィールドは彼女の深部へと迫ろうとする。アイリーンを知ることで今アメリカでいかに司法・死刑制度が揺らいでいるのかが掴み取れる。モンスターは何処に潜んでいるのか。
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







モンスター』鑑賞後にこの作品を鑑賞。率直なところ、事件の真相はまるで分からない。

アイリーンが連続殺人犯であることに間違いはない。アイリーン・ウォーノスという人間がいかなる環境で育ち、いかなる事情(精神面含め)を抱え、こうして収監されてきたのか。そして司法の狭間で何かを叫び続けていたのかということは伝わってくるものだ。これはドキュメンタリーの凄味だろう。

しかしながら、事件の真相はどうなのか?と問われたら曖昧なことしか頭に浮かばない。彼女は正当防衛から一転、計画的犯行であったことを告白する。それも束の間、今度は事件に関して述べることの一切を拒否。警察の陰謀が背後にあり、それを訴えたかったと彼女は言う。確かに彼女にとって警察は憎むべき標的である。タリアに裏切られたことの背景に警察が存在するからだ。十数年、怒りの矛先は警察にあったといっても過言では無い。

彼女の死を誰が選択したのか?作品はこういったメッセージを投げかけてくる。彼女自身なのか、司法なのか、それともまた他の何かか。最終的には「終身刑をアイリーン自らの手で取り下げ、そして彼女は死刑を選択した」ようなニュアンスである。監督は死刑を反対していたし、彼女に対する精神鑑定に疑問を持っていた。それでも死刑は執行される。おそらく監督のモヤモヤは未だに治まっていないはずで、だからこそこの作品だって成立するのかもしれない。

とにかく、個人的にはアイリーンが死刑が迫るにつれやはり切羽詰っているような気がしてならなかった。世の中には何か悪い歯車が存在している…そういう気がしてならない。モンスターは彼女だけでは無い。確実に。

ドキュメンタリー作品としも見応えは十分だと思う。『モンスター』と比較しても面白いかもしれない。「モンスター」でいかにシャーリーズ・セロンが素晴らしい演技をしたのか、この作品を一目瞭然だ。他にも監督の取材が多岐に渡っているのでいろんな視点で彼女や事件に迫ることも出来た。

アイリーンのインタビュー。審議で突き立てられた中指。陪審員、そして監督に浴びせられた罵声。執行前にアイリーンが残した言葉。

絶対に忘れることはできない…

(評価:★4)

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