[コメント] 戦国自衛隊1549(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「俺たちがやってきたことって、歴史のつじつまを合わせただけなんじゃないのか?」
…この“歴史”を“予算”あるいは“角川”に置き換えると、大変良く納得できる作品となります。
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あらかじめ言っておくが、現時点で私はオリジナル版の『戦国自衛隊』に関しては原作、漫画、映画ともに全く観ていない。単に機会がなかっただけだが、逆にその方が新鮮に観られるんじゃないかと言う気もして劇場に足を運ぶ。
…確かに、これは決して褒めるような内容の作品でないのは確かだ。しかし、自分でも不思議なほど、悪口を言おうという気がしない。同様の内容の『タイムライン』で散々毒を吐いた経験があるので、最早同じ事を言いたくないのもあるが、むしろこの予算でここまでよくまとめたと、褒めてやりたくなってきた…この後味はかつてどこかで?と思ったら、そうそう『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)で味わった後味と同じだった…そう言えば同じ手塚監督じゃないか。この監督には文句を言う気力を失わせる、不思議な相性があるのかもしれない。
そら確かにアラなんて探せばざくざく出てくる。戦国時代の人間の感性やしゃべり方が全然戦国時代っぽくないとか、アクションパートがしょぼ過ぎるとか、キャスティングがコテコテのばかり入れて浮きまくってるとか(そもそも鈴木京香はミスキャストでは?…なんか『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE』(1993)を思わせたのはともかく(笑))、なんで尾張の織田信長の話なのに関東が舞台なの?とか、そもそも主人公の江口洋介演じる鹿島が戦国時代に行く必然性がないとか、2年であんな石油精製工場まで作ってしまう工業力はどこから?とか、まあ細かく書けばまだまだきりがないが、その辺、どうだって良いという気分にさせられてしまった。だってどうせ大風呂敷を広げるんだから、いい加減に作ったって良いじゃないか。昔のテレビ特撮を見てみろ。このくらいのおおざっぱは当たり前…
…あ。なんで私がこの作品を悪く言いたくないか、分かってしまった。
この作品、昭和時代の特撮ヒーロー作品の形式とそっくりなんだ。
関東にこだわったのは『仮面ライダー』の敵が関東や首都圏にこだわったのとそっくりだし、富士の裾野を舞台にするのは東宝怪獣ものの舞台だからか。
それにあんまり悪く言いたくないのは、主役を歴史を修正する側に持ってきて、時間制限を加えたこと。実はここが一番重要な点。かつてオリジナルの『戦国自衛隊』が製作された1970年代は、まだ戦争をよく知っている世代の人が多くいたため、キャスティングでも苦労しなかったが、今や平成の代になると、戦国時代に見合うキャラクタが少なすぎるのだ(と言うか、いないと言ってしまっても良い)。だから、戦国時代の人間のほとんどは感情移入を拒ませ、今の世界から行った人間のとまどいみたいな部分を強調していたのと、時間を区切ることで時代への同化と成長に敢えて目を瞑ったから。かえってこれくらい割り切ってくれた方が小気味が良い。
後、重要なのが予算配分。邦画にしてはかなり金をかけているのは分かるけど、ハリウッドの予算と較べてしまうと、どうしても邦画は遣える金が限られてしまうため、アクションシーンは控えめにする必要がある。だから派手な部分はピンポイントにして、後は会話と人間で間を持たせようとする。それで良いんじゃない?予算内でなんとかやりくりしようとする、一種の職人的映画作りを見せてもらった気分だ。それにこれだったら、日本の成績が悪くても、海外で受けそうだし、そこそこ大丈夫じゃないだろうか?
やっぱり一応オリジナルの方は観ておきたくなってきた。
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