[コメント] 姑獲鳥の夏(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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京極夏彦による長期の推理小説“京極堂”シリーズの初映画化作品。このシリーズはそれぞれのタイトルに妖怪の名前が付けられ、一見おどろおどろしい印象を受けるが、内容は本格推理ものと言うところに特徴がある。特に戦後の焼け跡の記憶を引きずっている時代を舞台とするので、近代化と古い日本の風習が渾然一体となっているのが大変興味深い。
これまで数々の特撮作品を作ってきつつ、失われた古い東京の街並みに愛着を持ち続けた実相寺監督にはぴったりの素材だったと思えるし、思い切りケレン味の見られるカメラアングルやCGの使い方、複雑なカメラワークなど、実相寺節が溢れているし、老いてますます盛んと言うか、相変わらずの実相寺ワールドを楽しむことが出来る。
ただ問題は原作の分量にあった。確かにオリジナルの新書はたった一冊の本には違いないが、そのボリュームは通常の小説の倍以上。しかも目眩ませの伏線がわんさかと盛り込まれているため、これを一本の映画に仕上げるにはかなり困難だった。そこら辺のケレン味を取り去ってしまえば、物語自体は結構シンプルだが、ただシンプルに作ってしまうと、原作の持ち味を殺してしまうことになる。
結果的に実相寺監督が選んだのは、原作で語られた言葉を敢えて採用せず、映像のケレン味で見せようとしたと言うことだった。物語自体はほぼ原作のダイジェスト形式にし、そのカットのつなぎを延々と映像でつないでいる。
これが成功したかどうかはかなり微妙ではあるのだが、少なくとも私はかなり好意的に見ている。映像の奔流で物語を分かりづらくするというのは、確かに実相寺監督にはぴったりのやり方だ。未だに実験映像にこだわっている事を知ってむしろ好ましく思えたくらいだし。CGや光の使い方も凝りすぎているきらいはあるものの、この物語の方向性で言えば間違ってなかったと思う(撮影は僅かに33日で終えてしまったとのこと)。エフェクトにかけた時間がとても長そうな作品だった。
そう言うことで原作とは別物として考えるなら受け入れられる。一方原作のファンとしては「ちょっとこれじゃなあ」と言う感想。どっちも分かるんだよなあ。
キャスティングは悪くない。特に阿部寛の榎木津は、あの妙な濃い顔と胡散臭さがぴったりすぎる。今や榎木津の描写を読んでるだけで阿部寛の顔が浮かぶほど。一方主人公の関口の永瀬正敏と京極堂の堤真一はちょっと微妙かな?逆にしても良かったような気がする。相変わらず原田知世は綺麗…どうもこの人が出ると私は正常な感覚を失うっぽい。
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