[コメント] アイランド(2005/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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真面目な分析やら批評やらは他の人に任せる。もう観た記憶も薄れかかってるこの作品だが、SF映画好きの私が実は大好きな作品のひとつである。「実は」と書いてしまうあたり、なんとなくシネスケのマイケル・ベイ評者にエクスキューズしているようで小心者な限りだが、まあ小心者ですよ。そんなことはいいんですよ。
まず、アメリカは監督よりもプロデューサーの名前が映画の売りになることがある。そして、作品に対しての「口出し力」も強い人がいる。ちなみに本作品のエグゼクティブ・プロデューサーは『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のローリー・マクドナルドだが、知名度から言えばこれまでマイケルが付き合ってきたジェリー・ブラッカイマーの方が上だろう。だから向こうの予告でも監督の名前を前面に出して『パール・ハーバー』と『アルマゲドン』の監督という注釈が加わる(ちなみに米国版予告の最初にはユアン・マクレガーもスカーレット・ヨハンソンの名前も最後の一瞬しか出てこない)。プロデューサーも兼ねてるので最後のプロデューサー陣の名前表記もトップに載っている。名実ともにマイケルの映画なのである。
ジェリー・ブラッカイマーはアクション映画のプロデューサーをやる場合、ドッカンドッカンやらせるのが好きな人だ。その後のマイケル・ベイを見てもおそらくドッカンドッカンが好きな監督に見えるだろうが、同じドッカンドッカンでも微妙に違う。ジェリー・ブラッカイマーは「のっけからドッカンドッカン」(代表例は『デジャヴ』)で、マイケル・ベイは「観客が刺激が欲しかろうなと思った頃ドッカンドッカン」というパターンが多い。ような気がする。少なくともこの作品ではそう感じた。そこに「ボクのドッカンドッカンはジェリーのとは違うんだよっ! 本当は僕は最初からドッカンドッカンしたくなかったんだよっ!」という声が聞こえてきたのだ。気のせいだと思っていただいて構わない。
お話の内容自体も純然たるSF作品だ。『バッドボーイズ』や『ザ・ロック』や『アルマゲドン』や『パール・ハーバー』ではできなかった話だ。「みんなクローンクローンて言うけどさ、クローンの身にもなってよっ」という見方もできるが、私はこの映画を「正直者がバカを見るってのは、もうゴメンだっ! 正直者の逆襲だ!」という風に解釈した。さらに深読みすると「純粋な心を持った(真実を何も知らされていない)クローン」はマイケルで、「金にもの言わせて何かヤバくなったらクローン使うぞ」っていう側はジェリーだったのではないか。うん。さすがにこれは深読みしすぎだな。
クローニング技術は現実世界にもあるので表向きはクローンを扱う映画というのは「行き過ぎた科学技術を何も考えずに利用する人たち」への警鐘という意味合いも込められているのだが、その裏には「本音」であったり「何も知らない正直者」の象徴でもある。まあ、時代によっては「隷属される側の人」の象徴でもあったりするのだが、そういう「裏」のあるものを撮って「僕だってひとりでできるもんっ!」と言いたかったのではないだろうか、と思ってしまう作品であった。その後『トランスフォーマー』とか撮っちゃったりして「資金稼ぎに走ったか」とも思ったのだが。
ちなみに本作品のバジェット(予算)は約1億2千万ドルなのに対して全世界劇場興行収入は約1億6千万ドル。悪くない数字である。脱ジェリー後の成績としてはよいのではないだろうか。
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