[コメント] メゾン・ド・ヒミコ(2005/日)
大きな感動はなかった。しかし芸術として優れていると思った。素晴らしい映画だった。
実はストーリーそのものに傾倒するということはなかった。 決してホモとはゲイに偏見があるというわけではないが、映画の内容そのもに思いを寄せることはなかった。
なのにこの感動は何だろう。
犬童一心監督作品は3作目だが、どれも優しさがあふれている。そして、どちらかというと弱者の視点で描いているように思える。
『タッチ』や『黄泉がえり』のように商業的な映画でしか接してきていないので、彼の本質を理解するものではないが、この映画は映画的な世界にあふれていた。
特に、この映画の主人公達であるゲイの皆さんと過ごす風景。メゾンの美しさ。雲、空、窓越しに見える夕焼けなど、風景として印象に残るシーンが多かった。
人の心の話なのに、風景の中に自然と染み込んでゆくような描き方は初めての体験だった。
柴咲コウの演じる沙織という女性の環境にあわせて、都市のどろどろした風景とメゾンで過ごす日々の風景が見事に演じ分けできていて、とてもわかりやすかった。この辺の表現はこの監督ならではというところなのかもしれない。
それにしても柴咲コウという女優は不思議だ。全く美人でもなくつやっぽくもない、ふつーの女優だ。こういう映画の主役というタイプにはとても思えない。なのに彼女の表情の数々がこの映画の前編にわたって印象深く残っている。ラスト近くで黒い服を着てバス停に向かう途中大泣きするシーンなどは、強烈な印象だ。凄い役者だと思う。そして才能を感じさせる。
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