原作『タッチ』が世に出た時代には、熱血な野球は「巨人の星」があり、超人的な野球は「ドカベン」が、全員野球は「キャプテン」が既にあった。熱血にはほど遠い主人公が、ラブコメの枠内において予想外に（作者的にも）野球にのめり込んでいった…それが、週刊少年サンデーに掲載されていた頃の『タッチ』だった。だから『タッチ』には 飛雄馬のような執念や殿馬や男岩城のような特異なキャラや彼らのエピソードは必要なく、双子の兄弟とキュートな幼なじみさえいれば良かったのだ（今だにそんな作品をあだち充は作り続けているみたいだが）。

後半は映画らしいハショリでテンポ良いが、前半は原作に引っ張られすぎて「映画ならでは」な思い切りの良さがなかった。長澤演ずる南ちゃん以外の（オリジナル）女子高生たち、明星のベンチ入りメンバー以上に存在感が不明です。

クライマックスの演出も難。カっちゃん、速く出て来すぎでしょう。そこまで抑えてきた「カっちゃんの人生を背負わなくてもいいけど、背負ってしまうんだ」的な抑制が、水泡と化してます。何球もネバる原作の引きつけ方と比べるのもなんだけれど、何年生なんだか分からないぐらいのはしょり方をしているんだから、きちんと見せてほしかったです。最終学年の刹那的な演出を出さず、「まだ来年もありそう」な継続感は、ある意味カラっとした青春映画らしくて良かったのですが…。

いつの間にやら彼らの倍の年齢になってしまいました。さすがに気恥ずかしいですね。そして犬童監督には『ジョゼ〜』や『メゾン〜』のようなクセのあるものをやってほしいです。炭酸飲料そのものみたいな作品はなあ…。