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[コメント] シン・シティ(2005/米)

ここまで過激な物語が展開しているのに、眠くなるとは思いませんでした。評価できる点も多いんですけど、根本的に薄っぺらすぎるんですよ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 アメコミ作家フランク=ミラーの同名漫画を映画化した作品。ミラーはこれまでのアメコミの映画化には極めて懐疑的で、特に自身の『デアデビル』(2003)の出来に幻滅し、本作は絶対に映画化させないと明言していた。

 それが映画化の運びになったのは、一つにはロドリゲス監督の猛烈なラブ・コールがあるが、ロドリゲスはもう一つの譲歩があった。つまり、ミラー自身を共同監督にする。という離れ業である。もちろんコミック作家であるミラーは映画を撮った経験はないのだが、自分が好きなように出来るというのであれば。という事でこのオファーを了解したとか。好きなものの映画化とはいえ、ロドリゲス監督も板挟みにあって相当大変だったことだろう。

 そしてこの豪華なキャストの布陣。主役の三人を見てもブルース=ウィリス、ミッキー=ローク、クライヴ=オーウェンと、一流を集めているのみならず、脇だって、ジョシュ=ハートネット、ベニチオ=デル・トロ、イライジャ=ウッドなど、よくここまで集めたものだと感心できる布陣だった。そしてそれがまるで白黒の画面の中で動き回る様を予告で観てからは、期待度は跳ね上がった。まさに新しい映画の形と言えるほどの画像。

 それで、勇んで拝見。

 う…これは困った。

 確かに画面は面白いし、充分に派手なエフェクトと言い、ジェットコースタームービーっぽく、次から次へと楽しませようと言う演出にはあふれている。それぞれに愛を貫く漢たちの、ハード・ボイルド作で、特にEPISODE1のロークは本当に超人で、その姿はほとんど超人ハルク。

 それは分かってるんだよ。だけど、それがことごとくツボに入ってくれない。すかすかと素通りするばかり。

 いったい何でこんな面白くないのだろう?とつらつら考えていたら気が付いた。

 本作は“動く漫画”なんだな。

 漫画だからこそ許される表現でこれは勝負している。だけど、漫画だからこそ、全てが軽い。漫画に忠実であろうとしたお陰で、箱庭の中で紙芝居をしてるだけとしか見えないものになってしまっていたのだ。確かに画面はセンシティヴさに溢れているものの、死や残酷描写さえも記号でしかなかった。ここにはあらゆる意味でリアリティが欠如している。それはそれで充分価値観があるとは思うのだが、全てが軽く思えてしまった時点で映画向きではなくなった。

 それに漫画というのは、映画と違って能動的に読むものだ。面白くないと思ったら閉じれば良いのだが、映画の場合は面白くなくても目の前に画面が流れ続けるので、必然的にずっと観ていなければならない。興味の持てない漫画を延々めくり続けるというのは、かなりの苦痛だぞ。最後まで結局乗り切れないまま終わってしまったな。

 だから多分、これはつぼにはまる人にとっては最高の作品となるんだろうとは思うんだが、はまらなければやっぱり駄目なんだよな。私は明らかに後者だったと言うことで。ロドリゲス監督の作品って、合うのと合わないのが極端だけど、本作は合わない方だった。

(評価:★3)

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