原作は３０年にわたって連載中のコミックだというが、この映画化がなければ、知らずじまいだったかもしれない。母と見に行ったのだが、ひとときの幸福感を得られ、思いがけないプレゼントをもらったと思う。ほぼ満席に近い場内は、始終くすくす笑いやざわめきに包まれていて、自分もまた、時々あー。。などと小さくつぶやいたりして、皆と一緒に映画を見ている気分を味わっていた。

昭和１８年生まれの母は、この映画の舞台となる時代には中、高生。修学旅行で東京タワー（完成して数年と思われる）を訪れたという。旅行中におなかが痛くなり、病院へ行ったことなど、前にも聞いてはいたけど、話してくれた。映画に描かれていた集団就職組ではなかったものの、そういうものがあったことや、力道山や三種の神器などについて、実感を持っているようだった。その日の食卓は、同年生まれの父も交えて、ひとしきり賑やかだった。格闘技などあまり興味のない父が、力道山のことはよく覚えているようで、少し驚いた。

自分はこの時代について、知識を持ち合わせていなかったが、ドラマの丁寧な作りに好感を持った。主役級から脇に至るまでどのエピソードも良かった。三浦友和の役どころが甘く無く、心にしみた。