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[コメント] 生きる(1952/日)

ナレーションは仲代達也です。ただただ重い映画のように言われますが、映画館で大勢の人と鑑賞して下さい。笑えるシーンも沢山あるんですよ。後半への展開は見事ですね。驚きました。
chokobo

 役所の人間が役所と戦う!という映画なんですよ。時代は変わってもテーマは変わらない。いかにも日本の映画であり、日本の官僚社会を描いた映画として現代にも深く通じている映画ではないでしょうか。

 死を目前にして生きることの辛さは、本当に生きることへつながるか。自分がこの主人公だったら同じことができるか。大変難しいことだと思います。

 黒澤監督は、この前に『白痴』という映画でドストエフスキーに挑戦し、ある意味この作品以上に生と死について戦っています。その結果本人も含め多くの人が傷つき、その反動としてこの作品が生まれたとも言えるのでしょう。

 この主人公である渡辺勘治は、この後作られる『七人の侍』の勘兵衛へとつながります。明らかに同じ人物の両面を全く違う映画で全く違うキャラクターとして志村喬に演じさせています。

 黒澤作品の魅力はこの飛躍にあります。『白痴』から『生きる』そして『七人の侍』へという飛躍に連綿とつながる物語性が生まれているのです。『七人の侍』で結実したあのダイナミックなストーリーは、『白痴』の赤間であり、『生きる』の勘治であり、それらの個性とは裏腹な面が『七人の侍』へ飛躍したとも考えられます。

 それから、この作品も『七人の侍』もそうですが、音楽を担当している早坂文雄の影響が大きいことを忘れるわけにはいきません。早坂は病弱で、いつも生と死と背中合わせの生活をしていて、黒澤監督とは無二の親友でもありました。ちなみに早坂の弟子が佐藤勝であり武満徹だったわけですね。

(評価:★5)

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