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[コメント] 蛇の卵(1977/独=米)

ひたすら散漫で退屈。底無しの人格崩壊という主題とナチ前夜の限定を迫る史実が衝突し合って水と油。巨匠最悪の作品だろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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冒頭、新聞朗読で示される、レーニンはユダヤだ、キリスト教を弾圧している、という認識は、ああそういう見解もあるのかと思わされる。本作で一番面白かったのはここ。

デヴィッド・キャラダインは魅力的だが、なんでアメリカ人がどん底不況のベルリンにいるのか設定からして説得力がない。『キャバレー』のような頽廃描写の連発は何も盛り上がらず、各エピソードは断片的で散漫。収束の人体実験フィルムはベルイマンらしいがこれも煮え切らない。路上で馬解体して売っている描写などにわずかに力量が見られるが。やたらな人物へのズームインはヴィスコンティでも見習ったのだろうか。

結果、ユダヤ資本らしい切り口のハリウッド映画の凡作の一本にしかならなかった。ナチだから悪い、という落とし処が見え過ぎていて、想像力の飛翔が妨げられている。一方、真面目にナチを告発するなら、もっと歴史に密着しなければならない。本作はどっちづかずで中途半端である。

「予算があり過ぎて、人間より豪華セットの映画になった」とリヴ・ウルマンが回想している。

(評価:★2)

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