[コメント] ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005/英=米)
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俺が原作を読んでるのはこの巻までなんだけど、脚本は結構頑張ったほうだと思う。次回作以降につながりそうなエピソードはとりあえず中途半端になってでも無理やり残していたし(初恋エピソードとかね)、無駄に長いくせに薄っぺらい部分だった三校交流祭りを学園ドラマのノリでコミカルにまとめていた。あれ以上端折るわけにはいかないため、多すぎる登場人物それぞれのエピソードを削り、ハリーをメインに据えた展開にするのは仕方がない。ダンスパーティーを印象的に仕上げたのは効果的だったかと。
それでも結局のところ、冒頭から夢で暗示されるとおり、今回の作品はヴォルデモート(以下、妖怪のっぺらぼう)復活に最大の意義があると思っていた。つまりお祭りだけど、いつもとなんか違うぞみたいな。ワールドカップの惨劇、ハリーの夢、ハリーがなぜか試合に出る羽目になったこと、いったい何が起きようとしてるんだ?みたいな伏線をはりながらね。
ところが肝心の妖怪のっぺらぼうはあっさりしすぎ。伏線は途中で忘れ去られるほど印象が弱かったし、舞台の墓地はちょっと暗いってだけでセットみたいに見えるし、「苦しめ!」って言われてもハリーはあんまり苦しそうじゃないし、セドリックはどうでもいい扱いだし、魔法対決も迫力がない。あれじゃ子供が見ても全然怖くないんだろうなって思った。夢に出てくるくらい怖いのっぺらぼうを描いて、物語にメリハリをつけてほしかった。次回以降に期待しろってことかな?
で、そんな人畜無害さを筋肉軍団とフランス人形軍団が帰っていく遠景で終わるラストが物語ってる。俺は帰っていく彼らを眺める不安げなハリー、またはいつもの三人組の表情を映す不穏な雰囲気でエンドクレジットに突入してほしかった。あれじゃ「交流戦が終わってみんな帰って行きました、めでたしめでたし」になっちゃう。人も死んでるっちゅーに。そんなスッキリした話じゃなかっただろ!不安な幕開けだった交流戦は、最悪のシナリオで幕を閉じた。それに関してのダンブルドアの演説が「セドリックを讃えよう」で終わった以上、「これからはのっぺらぼうとの戦いになるぞ!」って観客に強く覚悟させ、次回作への期待と想像をかき立てるラストシーンがほしかった。三人でちょっとセンチメンタルな顔しながら「みんな変わっていくのね」「手紙書いてね」とか言い合ってる場合じゃなく。みんなが筋肉軍団とフランス人形軍団に手を振っているのを遠巻きに眺める浮かない顔のハリー(達)をクローズアップしながらエンドクレジットにするだけでどれほど印象が違ったことか。あんなあっさりした戦闘のうえに、あんなラストじゃ、肝心ののっぺらぼう復活が印象に残らず、三校交流祭がありましたってだけの映画になっちゃう。
最初から製作が決まっているシリーズである以上、ラストシーンは自作への布石であってほしい。たとえば『スパイダーマン2』だって展開ではハッピーエンドに見えたのに、ラストはスパイダーマンを眺めるヒロインMJの不安げな表情で終わった。あれによって『スパイダーマン3』でどんなことが起こるかの方向性を定めて観客は次回作への期待と想像に胸を膨らませた。あの映画に奇妙な余韻が残ったのもそのラストの効果だった。本作に至っては、もっと不穏なラストシーンだったら★4だったかも。
そうそう、最後に完全にCGと化した状態で出演したゲイリー・オールドマンと、素顔がわからないメイクを施していたレイフ・ファインズに拍手。でヴォデモート、鼻のないハゲってクリリンかお前は。
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