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[コメント] キング・コング(2005/ニュージーランド=米)

高所恐怖症の人は見ないほうが良い
chokobo

見ていて具合が悪くなるくらいカメラが縦横無尽に動きまくる凄い映画だった。

映画についてのことは、ほかのコメンテーターの皆さんにお任せするとして、この映画を作ったピーター・ジャクソンについて少し書きたい。

もちろん『ロード・オブ・ザ・リング』がすべてといえるわけだが、あの三部作から一気に『キングコング』に至った彼の思考がいったいどこにあるのか。

かつてのハリウッド映画界が大作主義で跋扈していた時代。それはこの映画にも出てくる映画人が活動映画として時代を謳歌した時代でもある。

映画会社にはいくつもの企画が持ち込まれるが、それをまともにヒット作として上映するためには、はったりに近い行為が使われていたことは有名。そしてこの映画の中でもそのことが序盤に語られている。このはったりこそが、思いもよらぬ素晴らしい映画へとつながってゆく場合があるのだ。

映画が映画について語ることは、これまでも多くなされてきたことだが、ピーター・ジャクソン監督はこの『キングコング』という映画で、映画そのもののはったりをかましたことが認められる。これはなかなか凄いことだ。

そしてこの映画そのものが大きなはったりであり、それを緻密に表現いたことが素晴らしいと思う。

ただし、これほどまでに”見せる”必要があるのか、というつらさもある。かつて映画の表現は見せないことによる思考があった。しかしピーター・ジャクソン監督は徹底的に見せる。この映画でも映画というより、技術としてのカメラが縦横無尽に動き回る。そして見る者は現実とはまったくことなる世界にいることを認識する。

髑髏島のエピソードも綿密に表現され、これでもかというほど見せる。ニューヨークのシーンも然りである。

これほど見せることにこだわる監督が、現実をどれほど凝視しているかよくわかる。

見せることの技術力と見せないことの表現について深く考えさせられる映画でもあった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ina くたー[*]

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