[コメント] どん底(1957/日)
貧すりゃ鈍す、と世間で言う。なるほど、例外もあるだろう。だが、妙に悟りきったコトバで貧民窟の和を保とうとする左卜全、あれは何もかも知り尽くした者の目、修羅場を渡ってきた者の目を持っている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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バイト先で、やくざの組長から足を洗った老人とつきあったことがある。実に人懐こい目をした好々爺で、人の世話をするのが大好きだった。その無条件に優しい目は、もはや全ての俗事を拭い捨てた達観した人間のものだったと思う。左はその男にそっくりだった。
三船の義賊(?)などは彼に較べれば可愛いひよっ子である。だから女ごときで人生を棒に振ってしまうのだ。他の貧乏人たちも、善も悪も為す勇気のないつまらない連中だ。だからこそ「どん底」に落ち、そこから這い戻ってこられないのだろう。逃げようにも、自殺するかしょっぴかれるか、そのふたつの選択肢しか選べない哀れな鈍者たち。やはりその中に簡単に入り、簡単に脱け出した老人は、あんな小さなワクには収まらないだけの何かを持っていたのだろう。
金持ちだったか、大悪党だったかは観る人の決めることだろうが。
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