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[コメント] 悪い奴ほどよく眠る(1960/日)

浮ついた調子が、公団職員の連中もまた被害者でもあるという認識を欠いたがゆえの浅墓さに見えてしまう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作の見所は西村晃を幽霊の藤原釜足が路上で驚ろかし続ける件で、この撮影は怪談ものの応用で抜群なのだが、三船敏郎の猟奇的な仕掛けが過ぎて積極的に愉しむ気になれない。志村喬の軟禁をスチャラカ音楽で茶化す辺りもヒステリック。調子を抑える演出ができておらず、この浮ついた調子が、公団職員たちもまた被害者でもある、という認識を欠いたがゆえの浅墓さに見えてしまうし、更に悪い奴は寝ているよ、というタイトルを裏切ってもいる。

三船は香川京子とどうでもよいような愛情を交わして墓穴を掘る。いや、桑畑三十郎の如きスーパーヒーローの娯楽作にするよりも個人的には好ましいと思うのだが、これだけの尺がありながらふたりの情の交わりに印象深い描写は何にもなくおざなりにしか見えない。こんなことなら三十郎のほうがましだ。最悪なのは彼の事故死を映画が描写しないこと。だいたい昔から脚の悪い香川が結婚式で転ぶ訳はなかろうし、序盤の清水元の轢き逃げもえらく下手糞だし、どうも本作、ここぞという処でやる気が見えない。何なのだろう。こういう良心的な題材がコケるのを見るのは哀しい。

若い頃はまず黒澤の映画から観るものだし、感動した記憶もあったのだが、いま観ると今井や増村、熊井らに比べてレベルが低いとしか思われず。

(評価:★3)

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