[コメント] 椿三十郎(1962/日)
レビューをまだ書いてなかったことに驚いたが、実際のところ「書けなかった」のだ。私が何かを語るのもおこがましいほど良くできた映画。
お堂に寝泊まりしていた怪しげな素浪人登場。なのに開始十分で観客と若侍をして「この人の言うことは聞いておかないとな」という気にさせる、お話の作りのうまさがすばらしい。もちろん三船敏郎という名優あっての説得力だが、それだけではない。
冒頭部分だけで、どういうことがこれから起ころうとしているのか察しが付きながらも、最後まで二転三転して目が離せない展開がすごい。
構図や撮影や脚本や音楽に大道具・小道具に脇役全部すごいけど、やっぱり大胆にして人情味のある素浪人をリアリティもって演じられる三船敏郎あっての映画だなと思う。
すばらしい料理を食って言うべきことは「うまい」の一言だけであるように、この映画にも、くどくどした説明は無用だ。今までこの映画のレビューを書いていなかったことに今日気づいてびっくりしたけど、単に「書けなかった」だけだったのだ。こんなよくできた映画に何を言ってもむなしいだけだと思う。
話はちょっと飛んでしまうが、織田裕二主演の『椿三十郎』は、同じ台本で演じていて、非常に楽しかった。そりゃ当然三船-黒澤の『椿』には及ばないかもしれないけど、挑戦する気持ちはいつも大事だと思う。織田-森田版をけなす向きもあるが、ストーリーをぐちゃぐちゃに改変しておいて、真っ向勝負する気もない "The Last Pricess" なんかとは志が違う。
いずれにせよ今後もいろんな人に演じてもらいたいと思う、良くできた台本だ。
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