[コメント] 天国と地獄(1963/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
全体としては4部構成とも言える作り。「誘拐発生と葛藤」「新幹線での身代金受け渡し」「犯人に辿り着くまでの捜査」「罠にかかる犯人」。それぞれにそれぞれの盛り上がりがあるから、2時間半が飽きずに観られます。
最初のプロットでは三船の葛藤が中心。『七人の侍』では無償で命をかけていた三船も、自分の生活を守るために葛藤するようになっちゃいました。戦国時代と現代の違い、お金は恐いねぇ。
とここまでで徹底的に密室の圧迫感と静寂を描いてきて、いきなりの新幹線へ。音・揺れ・景色のブレが固まりとなって緊張感を押し上げてくれます。窓からお金を落とすシーンでは「早く早く!電車過ぎちゃうよ!」くらいの勢いです。
そしてまた静のシーンへ。刑事たちの地道極まりない捜査。パズルを解いていく感覚。
最後は個人的にはやり過ぎ感もあった罠のプロットです。でも映像的にはここが一番美しい。この当時の世相や空気が見え隠れして面白いです。ディスコのメニューで「豚鍋」って。「ヘイ彼女!豚鍋でもしない?」かな。
主人公三船が善人だっただけに、主題である「金持ちと貧乏人の明暗」はピンと来ない部分もありました。三船が徹底的に嫌な奴で山崎努が善人、仲代達矢釈然としない、みたいな展開の方が主題は伝わったように思います。
よって個人的クライマックスは「身代金を払うかどうか悩む三船」辺りでした。「命」と「お金」なら命が大事。そう言うのは簡単だけどそれってこういうことなんだよ、って突き付けられたようで。そう言うからには腹くくって言わないとね。頑張りましょう。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (7 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。