[コメント] ロッキー4 炎の友情(1985/米)
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ロッキー戦の敗北をどうしても認められず、ついにジムでの無観客試合で再々戦を果たしたアポロ・クリード。だが、その闘志はいまだ冷めやらず、今度はソビエトの巨人に挑戦したいなどと無謀なことを言い出す。
このとき、ロッキーに協力を仰ぎたいアポロはロッキーをこう説得する。
「俺たちはファイターなんだ。戦うことをやめられないんだ」
確かにアポロはそうだろう。だが、ロッキーは果たしてそうだったのだろうか。
1作目、ロッキーはアポロ戦が決まる前からすでに引退を決意していた。2作目、3作目でも「やめたい」「全然やる気が出ない」オーラを放ちまくり、嫁さんに焚き付けられなければリングに上がるどころか練習にさえまともに身が入らない有様だった。
「自分がただのゴロツキでないことを証明したい」
その思いだけで草ボクサーから世界タイトルマッチに挑んだロッキーは、ついにそのタイトルを獲得した後も、チャンプとしての誇りと責任を背負うことから逃げていたように私には思える。『2』、『3』でのロッキー・バルボアの闘争本能、あるいは殺戮本能と呼ばれるものは、アポロというライバルと、エイドリアンというパートナーの存在なしには維持しえない性質のものだったのではないだろうか。世界王者という絶大な立場に、ロッキー自身がどこか戸惑っていたように思えてならないのだ。
そして、それはもしかしたら、『ロッキー』という大傑作でハリウッドの頂点に立ってしまったシルベスター・スタローンという脚本家の姿そのものではなかっただろうか。
今作に至り、ロッキーはついにアポロを失い、彼自身がアメリカン・ボクシングの代名詞となって世界に戦いを挑んだ。そしてドラゴを打ち倒し、比類なき世界の王となった。それは脚本家スタローンがようやく『ロッキー』第一作からの脱却を果たし、新たなる一歩を踏み出した瞬間ではなかったか。
だからもう今作は、ポーリーのサイテーぶりに頼る必要はなかった。ひとつの新しい作品像を完全に構築して見せたシルベスター・スタローンとロッキー・バルボアに、惜しみない拍手を送りたい。
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