[コメント] エリ・エリ・レマ・サバクタニ(2005/日)
敢えて言おう、カスであると。
「宮崎あおいタンに目隠しプレイを敢行したい!」というごく個人的な欲望に基くこの映画は(あおいタン関連の一部のシーンを除けば)ほぼ全編に渡って弛緩した映像と空虚な台詞が垂れ流されるばかりで、「出来/不出来」という尺度で見るならば圧倒的に不出来な、控え目に言って最低なものに思われます。しかし何よりタチが悪いのは、作り手がこれをあたかも「出来/不出来」という尺度の埒外の作品であるかのように見せ掛けていることです。
例えばこの映画には「自ら命を断つ<レミング病>なる奇病が蔓延する近未来のニッポン」という90年代のセカイ系漫画のような設定があるわけですが、その設定が(設定を越えて)観客を納得させうる映像、世界として提示されることは一度もありません。かろうじてあるとすれば、劇中で登場人物たちが偶然(!)耳にするラジオ放送で「最近ヤバイ病気が流行ってるらしいねー」などとお粗末な説明が行われるのみです。
こうした手抜き対するエクスキューズ、予防線として「いやレミング病ってのは現在の日本の失業率とか社会の在り様に対する危機感の現われで…」などという回答が用意されているわけです。『Helpless』において「父親の不在が天皇の喪失を意味している」と言ってしまうのと同様に、この種の陳腐な寓意で大状況を語ってしまうのは傲慢で、何より映画として余りに怠惰ではないでしょうか。
斯様なフィルムを「映画への愛に満ち溢れている」であるとか「豊穣な映画的体験」であるとか、空虚な定型句で誉めそやすことを我々は自らに強く戒めねばなりません。
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