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[コメント] 白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々(2005/独)

最近のドイツ映画はその類を見ない劇的な歴史を活かした映画がでてきて嬉しい限りです。製作・スタッフ・役者に至るまで純国産にこだわっているものが多く本作もその一つです。本作の難点は動きが少ない所ですが、その分心理描写でカバーしていたと思います。
スパルタのキツネ

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本作の主人公ゾフィー・ショルを演じたユリア・イェンチは、『ベルリン、僕らの革命』のヒロインを演じて以来、私的にドイツ女優の中では注目度が高いです。「ベルリン〜」では、主演の若者3人組の中の紅一点を演じていました。東西統一後の貧富格差が進むドイツ社会で、平等を謳った革命を起こそうとした彼らを描いたこの作品は、シリアスなテーマの中に、彼ら特有の富裕層に対する「教育」活動やヒロインをめぐる三角関係などコメディータッチな演出をしており若者らしい作品でした。彼女はちょっとドジな役回りでそのコメディ的な部分を多く受け持っていて印象的です。

本作の彼女はシリアス一本調子でこの路線も良かったです。私の中でドイツの強い女性と言えば、その代表格はマレーネ・ディートリッヒでしたが、それまで気丈に振舞っていたゾフィーが死刑執行直前の独房で嗚咽を漏らしたシーンに見られるように、彼女は、強い信念の中に若者特有のもろさと純粋さを合わせ持っているように描かれており、新たな強いドイツ女性像を見た気がしました。 

さて、最近のドイツ映画の位置づけは私的に上昇中なのですが、純国産の作品が多く、そのため馴染みの役者が増えてきたこともドイツ映画を見る上での楽しみの一つです。なかでも時代がダブっていることもあるのですが、本作は『ヒトラー 最期の12日間』と同じ役者を多く採用しています。

その代表格がゾフィー・ショールを取り調べたゲシュタポ取調官を演じたアレクサンダー・ヘルトで、彼は「ヒトラー〜」ではヒトラーの外交官を演じています。本作では立場上ゾフィーに強くあたりつつもその処遇を配慮し、しかも同情心はひた隠すと言う複雑な役柄でしたが、「ヒトラー〜」のほうは自分の考えを持ちつつもヒトラーに流されてしまう気の弱い誠実な役柄だったのと対照的でした。また、スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』でナチスのSSとしても出演しているように役者としての実績はかなりあるようです。

次に終盤の裁判で最高判事を演じたアンドレ・ヘンニッケ。彼は「ヒトラー〜」で現場司令官モンケを演じてました。そのベルリン陥落間際の現場を機敏に指揮する手際などかなりの男ぶりでしたが、本作の最高判事はひどい人間としか言いようがありませんでした・・・。ゾフィーにとって悪の権化だからしょうがないのでしょうが、極端に「悪」すぎる演出だった気がします。アンドレ・ヘンニッケは、文人より軍人を演じたほうが私的に断然好みです。

そして、裁判でゾフィーの向かい席に座った検事を演じたのは、「ヒトラー〜」でヒムラーの医官グラーヴィッツを演じたChristian Hoening。「ヒトラー〜」では、ヒトラーに彼の願いが拒絶され悲しい最期を遂げるのですが、本作では検事と言う立場ながらゾフィーを糾弾することなく同情的なようでした。どちらともマイナーな役どころであるにもかかわらず、その大柄な体形に人のよさそうな顔が妙に記憶に残ります。

最後にゾフィー・ショルのユリア・イェンチ。彼女も「ヒトラー〜」の冒頭で秘書候補の一人としてちょい役ながら出演しています。台詞は一言二言ある程度でしたが「ベルリン、僕らの革命」で気になっていたので私はばっちり気が付きました。これからも彼女に期待してみましょう。

(評価:★4)

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