[コメント] 情無用の街(1948/米)
リチャード・ウィドマーク率いる犯罪組織の規模が程よい。構成員は一〇名足らずか。ボスのウィドマーク自らが実行犯も務めねばならないというのが却って彼の口だけ番長化を妨げ、平等な労働感を生んでいる。勢力拡大を図る新興組織にふさわしく、構成員のリクルート法を念入りに描いたあたりも目新しい。
FBI最先端捜査術のピーアール映画という側面も強く、その態度はプロパガンダ的と云っても過言ではないほどだ。そのためもあるのだろう、作中人物の心理はものの見事に捨象されている。試しにこれと「捜査当局と犯罪組織が互いに内通者を送り合っている」点で共通する『インファナル・アフェア』とを並べてみれば、その情緒の在りようの違いは歴然とするだろう。
ジョセフ・マクドナルドの黒白撮影はボクシング・ジム、武器倉庫、工場など夜の屋内シーンにおいて際立った冴えを見せる。心理の軽視はサスペンスの欠落を招きがちだが、マーク・スティーヴンスが倉庫でウィドマークと鉢合わせかけるシーンは「暗闇に揺れるサンドバッグ」など細部に対するケアが行き届いた撮影・演出で(カットバックは少々ぎこちないけれど)上等のサスペンスを創出している。
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