[コメント] 歌え若人達(1963/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ビルの窓ふきのバイトから芸能界にスカウトされる松川勉(このショットはいいものがある)。松川は現役慶應ボーイでこれがデビュー作とのことだが、滑舌悪くていかにも俳優向きではない。劇中岩下志麻相手に俳優を辞めよう辞めようと悩みを告白するのだが、辞めたほうがいいよと賛同したくなる。もっと別のいい人生があったのではないだろうか。
8チャンネルのアクションドラマ、綿つかった雪山のセット。キノシタが松竹辞めてテレビ(TBS)に進むのは翌64年で、予行演習に見える。ラストは松竹の「新春スターパレード」で佐田が本人役でおいら岬を披露し、楽屋で田村高廣が『女の園』の主題歌を練習している。キノシタにかかれば当然に大スターも子供みたいなものだ。岡田茉莉子の紹介で新人が初々しく挨拶
その他は、学帽かぶっている学生はいなくなったなどという学生事情の感想列挙から始まる学生寮物語で、何が見処なのかよく判らないが人懐っこい後輩の山本圭がいい。それに男友達から借金し続ける倍賞千恵子も危険な田舎娘を演じて印象的。下宿している道路から畑挟んだ二階屋が何度も映し出され、東京郊外にはもうない光景でこれも印象的だった。田舎から出てきた東山千栄子は三上真一郎に出世するまで女は避けなさいと忠告しているが、これはもう時代遅れのお婆さんという描き方。親が金持ちだった川津祐介のサンドイッチマンへの転落は印象薄い。
男子学生寮ではギター伴奏で「トロイカ」の合唱をしている。ダンパの続きの屋外キャンプファイヤーでもロシヤ民謡でダンスしている。歌声喫茶もそうだがこの時代、ソ連に学ぼうというロシア文化愛好の嗜好があったのがここでも伺える。軽音楽文化が欧米一辺倒になる前の時代の記録。学園祭ではケネディの被り物で核実験反対を訴えようとして喧嘩になっている。政治は労働者や農民が主体、学生は勉強さ、という割り切った科白もある。
撮影はふたりの対話の場面でしばしば横顔を撮り続けており、この画が余り面白くなかった。学生寮もドタバタもイマイチ。ストリップは乳首に銀色の被せして踊っている。タクシー運転手役の渥美清はキノシタ映画唯一の登場か。
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