[コメント] この天の虹(1958/日)
当時の八幡市民が大気汚染に何の疑問も感じてない筈はないのだが、そんなボヤキを登場人物が一言も発しないのが逆にリアルで興味深い。
『陸軍』に少し通じる部分もあったが、繁栄の渦に巻き込まれるとこんなPR映画も作ってしまうのね。
モクモクと煙を上げる煙突をバックに会話するショットがよく映るのだが、 当時は大気汚染のことなどあまり気にしてない様子が興味深い。 ロープウェーのアナウンスなんて「七色の煙」とか言って、誇りすら感じられる。
ちょいと調べるとイタイイタイ病が1955年、水俣病が1956年、四日市ぜんそくが1960年、第二水俣病が1965年ということで、 この映画の公開された1958年はまさに日本中が公害真っ只中、まっくろ黒助。当時はまだ公害に対する認識が甘かった時期と思われ妙に納得してしまう。
少しぐらい公害批判してくれよと思ったが、どう見ても八幡製鉄所のPR映画なわけで、登場人物が咳をしながら「ここの空気は酷いね」などとボヤいたりしようものなら 製鉄所から文句言われそうだから遠慮したのだろうか。
また、集団就職で地方から都市部へ若者が流れ始めたのが1954年からということだから、 九州から若者が流出するのを防ぐ目的で作られた可能性も考えられ、これだけ福利厚生がしっかりしてますよとか、これだけ可愛い娘さんがいますよとかアピール必死すぎなのがまた面白い。ふと軍艦島バージョンも作って欲しかったなあと思った。
ちょっと細かいけど、変な台詞がちらほらあって、一番気になったのは須田が「相良さんを見損なっていました。もっと男らしい人だと思っていました。」というところ。「見損ないました。」だと思う。あと他にも2箇所ほど変な表現があった。でも「初めまして溶鉱炉の影山です。」と挨拶するのは面白い。
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