[コメント] かもめ食堂(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
食堂を開き、市場に行き、自宅で寛ぐ、毎日の暮らし。
街角にある小さな空間。いつもそこに変わらずある場所。そしてそこにいつも居る人。
主人公のサチエがとてもきりりとした清さを持ってそこにいる。肩の力を抜いて、自分のペースで生きる。でも大切なことは、自分の中でしっかり落ち着けていて、だからこそ、すべてを柔らかく受け入れる。人との関係に親密な間をおく。
そうすると、みんなの良いところが自然と出てきて、大切な場所が、親密な関係が育まれていく。
そういう生き方が、たたずまいが本当に美しいと気づかせてくれる。
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「間」の持たせ方がとても上手で、静かな、言葉少なな、動きの少ない場面が不思議と心地よい。それをさらに高める空間的なバランスが、食堂のスケール感、人と人との距離感、画面の切り取り方がなんとも秀逸であり、料理の見事な手際よさと相まって作品を磨き上げている。
それから配役が抜群にいい。押さえた演技で役者の個性の必要なところだけをキッと光らせる。エキストラ的な人もみんな無駄なく必要で、存在自体で静かに何かを語っている。
中でも片桐はいりの起用は素晴らしい。下手をすると変な存在感が出てしまいそうだが、彼女の内なる繊細さを見事に醸し出している。
エンディングテーマがまたフィト。ちょっとシュールな演出と陽水の歌が見事にマッチングしている。
※群ようこさんの原作には、それぞれの生い立ちが書かれていたり、食堂を開くまでのことも書かれていて、合わせて読むと興味深い。映画との違いを観るのも、「本」と「映画」の表現力の違うんだなあとわかって良い。
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