[コメント] かもめ食堂(2005/日)
料理が人々のコミュニケーションを媒介し、それに心動かされた思わぬ人の一言で問題は解決してゆく。それは余計な理屈を越えた原始的だが確実な繋がりだ。充分この映画を堪能するために、空腹のまま映画館に足を運ぼう。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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小林聡美の握るおにぎりは旨そうだ。片桐はいりでは豪快すぎて握りつぶされそうだし、もたいまさこでは握る力が足りなくてポロポロこぼれ出しそうな気がする。小林の気配りは、おにぎりの適度な柔らかさが充分に証明している。
この食堂の成り立ちは描かれていないし、そんな資金を小林がどこで稼いだかも謎のままだし、いつ彼女がフィンランド語を学んだかも分からない。でも、そんなことはどうでもいいことだ。『かもめ食堂』というタイトルが総てのエピソードを支配している。いわばタイトルありきの物語だ。この店のコーヒーを飲み、おにぎりをハグハグ頬張って、はじめてアニメファンの青年や、目つきの悪い中年女や、コーヒーの秘伝を伝えてゆく謎の男は小林と結びつくのだ。そして、メイド喫茶の気色の悪い女の子たちの応対なんかより、百倍は嬉しくさせてくれるここに集うオンナ達のサービスは、ついつい聞かれもしないのに抱えた秘密を口に出させてしまう。そう、おにぎりもコーヒーも、自分で作るよりヒトに作ってもらって、そのヒトの顔を見ながら口にするほうがおいしい。そのヒトの生きてゆく姿勢さえ、そこからは読み取れるように思う。
荻上直子は前作『恋は5・7・5!』では男をも描いて咀嚼不足が鼻についたが、今回は女たちの群像を描いて深みに至った。いずれ劣らぬ演技者揃いの3人は、荻上に気持ちよく操縦されているように自分には受け取られた。
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