[コメント] タイタニック(1997/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
タイタニックは売れました。その売れる意味も充分に理解してます。客観的にみても確かにタイタニックは興行成績が上がる作品だとは思います。しかし僕には、その売れる事を意識した構成が鼻についてしまうのです。売れる事の是非は別として、名作とは到底呼べないような構成なのです。ではレビューをしたいと思います。
タイタニックの冒頭は、裸婦画の謎により物語に徐々に惹き込まれていく魅力的な描き方です。そして老女ローズの回想が始まり、過去の体験を切々と語っていくのです。興味津々、いつのまにか物語りに入ってしまう観客も多いでしょう。そして1912年に場面転換して、豪華客船タイタニック号にローズ一行が乗り込むシーンになります。乗り込むのは主人公としての娘時代のローズ。脇役では有りません。
さて場面はジャックとファブリッツオがポーカーをしている賭博場に切り替わります。そしてこの時点からが怪しい構成になってきます。ここまではローズの目線で過去を話しているのに、なぜか賭博場ではジャックの目線に変わっているのです。構成の基本としては、ローズ自身の目線でジャックと出会い、その後でジャックの素性を観客に見せるのが一般的だと思います。(ローズとジャックが出会っていれば、その後の展開はジャック目線になっても問題はないという事です)あくまでもローズが主役なのですから。
多分キャメロン監督には、ジャックもローズと対等の主役級キャラとして位置付けたい意図があったのでしょう。そして、この方が女性ファンが喜ぶと踏んだのかもしれません。興行的にもレオナルド・ディカプリオを全面に出した方が正解でしょう。しかしながら、映画を纏まったひとつの作品として観る僕にとっては、この展開は興醒めしてしまう構成なのです。これでは折角のローズの回想という素晴らしい構成が台無しになってしまうからです。
しかもジャックとファブリッツオのチケット入手は劇的です。男友達二人で苦労して手に入れたという意味でも、この二人の存在は作品的にも目立つ存在であり、切っても切り離せない仲間として描かれているのです。しかしながらタイタニックに乗船した後は、ファブリッツオの存在感が殆ど感じられません。ジャックが全面的に行動するシーンばかりです。これでは二人で勝ち取った劇的なチケット入手の場面が台無しです。構成ミスの上乗りなのです。確かにファブリッツオの存在を色濃く描かずに、ジャックとローズを中心に描いた方が場面も生えるでしょう。恋愛ものとしても綺麗に描く事が出来るかもしれません。しかし中途半端な人物の登場のさせ方は作品全体の質を落とすと思います。
とりあえず代表的なあざとい構成の部分を記しました。少なくとも僕はこの構成では集中して映画に感情移入する事が出来ません。正直、このシラケた気持ちが元に戻るまでに時間を要しました。それは氷山が激突するまで・・・。
以降はそれまでの白けた雰囲気を一掃するかのように、演出と特撮の素晴らしさに目が釘漬けになりました。キャメロン監督ならではの、素晴らしいパニック映画に仕上がっていたと思います。展開的にもドキドキハラハラしました。この素晴らしさは忘れてはならない部分だと思います。そう言う意味も含めまして、本当に前半部の構成のあざとさがなかったら・・・、と思うと残念でなりません。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (8 人) | [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。