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[コメント] ヨコハマメリー(2005/日)

狂人か、哲学者か。アイドルか、庇護の対象者か。はたまた白い亡霊か。彼女を目撃した人は、それぞれがそれぞれの像を彼女の上に見るだろう。その時、人は無意識に自らの「歴史」と「都市観」と対峙させられている事に気づく。そして、街の中心に佇む、歴史の偶像のような、歴史のおとした影のような彼女もまた確かに人としてそこに在ったということも。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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巨大な物語。物語と呼ぶと語弊があるのかも知れないが、歴史の連続性と相関性の中で語られる1ページに過ぎないメリーさんを中心とした円に、大変な重みを感じさせられる。終わるものと、始まるものと、そしてまた終わるものと。永登元次郎氏の歌はお世辞にも巧いとは言えないけれども、確かにこの人(歴史)にしか表現できない声なのだ、とその深みに打ちのめされる。                       

メリーさんは存在し続けることで「問い」を発し続けた。異様な白塗りは偶像となるための仮面である、という解釈は過剰にロマンティックと思うけど、私はこの解釈が好き。特に偉人というわけでもない彼女が、漂流する歴史と街の、つまり人の「いかり」のように見えたからだ。              

ドキュメンタリーとカテゴライズするには多分にいかがわしい作りだが、3819695さんのご指摘通り、そのいかがわしさを自覚した上と思しき潔い画面作りが素晴らしい。終盤の伊勢佐木町静止ショットは『楽日』だ!ナイス!なんて思いましたが横から五大路子が歩いてきたんでちょっとがっかりしました。あすこは五大さんいらないですよ・・・と、これは余談です。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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