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[コメント] 出来ごころ(1933/日)

周囲がどんなにきな臭くなっても、一貫してこの流れを作ってきた小津監督の力量こそが日本の資産。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 喜八ものに共通するのは下町情緒だが、出てくるキャラ、特に喜八が下品なようでありつつ、実は紳士的でフェミニストだったりするのが面白い所。ここでも春江を引き取り、面倒を看る喜八は助平心や恋愛感情よりも、目の前の困った人を見捨てることが出来ない。という正義的・紳士的な態度から出ている訳だし、粗野な中、非常に上品さを感じる。

 この品の良さはおそらく監督自身から来るものだろうし、監督が当時傾倒していたハリウッド映画から来るものだろう(事実本作は『チャンプ』から発想を取ったとのこと)。

 これは優等生的な作品とも言えるのだが、これが作られた年代を考えると、とても画期的なことだと分かる。何せ1933年と言えば、日本は着々と軍事力を上げていた時代だし、戦争に向けて心構えを強要していた時代でもある。自然映画も威勢の良いものが求められている時に、こんなほんわかした作品を作り上げたという小津監督の卓越した感覚に拍手を送りたい。

(評価:★3)

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