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[コメント] 嫌われ松子の一生(2006/日)

松子のような境遇の人は、現実にも存在していると思うのですよ。きっと。
ホッチkiss

◆中谷美紀すんんげぇ!!もうこの映画で、ワタシ的に完全ブレイク。こんなに女優としてのポテンシャル高いとは思いもよらなかった。とことん悲惨な、否凄惨と言ってもいい松子の一生を文字通り体当たりで演じ切っている。明らかに、ただ単にエキセントリックなキャラの役柄だったというだけでは断じてない。観てればわかる。撮影途中で逃げ出したくなったとインタビューで語っておったが、ホントに逃げたビョークなんかよりずっとプロ根性あるぞ。ワタシ的にはダンサーインザダークよりも数段面白いし。今年度各映画賞の主演女優賞候補最右翼だろう。劇中挿入される唄は中谷美紀本人が歌ってるんですか?だとしたら滅法うまい。

◆ワタシは前作、「下妻物語」で中島哲也監督の映画に初めて触れた。とかくポップでビジュアルに特化した部分にばかり目が行きがちな映画ではあったが、その裏には「友情」だとか「成長」だとか「愛」なんていうごく普遍的なテーマを拡大解釈な演出で盛り込まれている。役者陣もアツい演技でそれに応えた、ワタシ的平成16年度ベストワンに輝くスバラシイ作品であった。今回の映画でもその方法論は全開フルスロットル。あんまり全開過ぎてもうこれはミュージカル仕立てにせざるを得なかったんだろうな。たぶん。ともかくいやもう、ラスト30分は半泣き。みぞおちの辺りがずっときゅきゅ〜っと痛くなってた。出番は多くないが病弱の妹役、市川実日子がとてもいい存在感出してる。

◆そのミュージカルコメディ風味の演出とはウラハラに、松子の生涯は陰惨を極め、人によってはドン引きするかも知れない。だけど松子のような境遇の人生は映画の中だけに存在するフィクションに過ぎず、とりわけ極端に描いたものなのだろうか?ワタシはそう思わない。同じような、いやそれを上回るような境遇におかれた人間はきっと現実にいて、しかも決して珍しい存在ではないと思うのだ。たぶんね。一人の女の転落人生を描くことで、本当の”幸せ”とは、”愛”とはなにかという問いに、回答のひとつを提示するのがこの映画の主題と見る。あたかも背景に暗い色を置くことによって、モチーフをより鮮やかに浮かび上がらせる絵画技法ように。そういった側面からでもこの映画は”ビジュアル”特化映画といえるのかもしれない。

(評価:★5)

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