コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 嫌われ松子の一生(2006/日)

思った以上に映画的に仕上がり、レトロ・ニュー・ビューティフルな世界観が魅力的で、中盤まではものすごく楽しめた。だが、終盤、きれいにまとめようとし過ぎた感があり、失速したのが非常に残念。(2006.06.03.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『下妻物語』と同じく、星は3つだけれど、前作よりも本作の方が魅力的だった。

下妻物語』はユニークな映画だとは思いつつも、物語の骨組みは結局のところ定番の青春友情物語だったので、映像とストーリーにアンバランスさを感じてしまったのだ。だが、『嫌われ松子の一生』は、悲劇的な女の生涯をカラフルな映像と音楽で描くという、一見アンバランスそうにも見える構成なのに、すごくまとまっている。

鑑賞前に一番気にしていたことは、ハイテンションに疲れたら最後まで観るのは苦痛ではないか、ということだったが、それを微塵も感じさせなかったので驚いた。この世界観を構築した中島哲也への評価も前作より上昇した。レトロ・ニュー・ビューティフルな映像世界に見事に引き込ませてくれた。

 冒頭からのハイテンションでポップな映像の中に、クラシック映画風のタイトルロールだったり、サスペンス劇場の挿入だったり、ときどき昭和テイストを感じさせてくれるのが良い。中洲のソープ店もそうだし、島津理容店もそうだし、きっちり昭和の雰囲気を出しているのだ。

その“レトロさ”と、映像世界の“新しさ”、それに加え、文学青年・八女川の電車に撥ねられた足が飛んでくるような“グロさ”、それらがバランスよくこちらに迫ってきて“ビューティフル”な世界を見せてくれた。思った以上に映画的だった。

 だが、終盤に行くにしたがって失速してしまったのが残念だった。昭和を描いていた時代の勢いが、平成になるとなくなってしまった。前半の毒のこもった感じが、終盤になると控えめになり、映画をきれいにまとめようとする感が強くなってしまった。「松子は幸せだった」というような要素はもっと排除する形でも良かったと思う。

 ラース・フォン・トリアーの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のような強烈な映画が好みなためか、どうもそう感じてしまったのだ。ただ、大衆娯楽映画として、多くの若い女性にも楽しんでもらおうと考えると、ファンタジックなエンディングにうまく終着させたとも思う。少し刺激を感じるユニークな映画が観たい、という女性にはすごくフィットする映画だ。その点、男性の僕は少しずれていたのかもしれない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] sawa:38[*] セント[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。