[コメント] 嫌われ松子の一生(2006/日)
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『下妻物語』と同じく、星は3つだけれど、前作よりも本作の方が魅力的だった。
『下妻物語』はユニークな映画だとは思いつつも、物語の骨組みは結局のところ定番の青春友情物語だったので、映像とストーリーにアンバランスさを感じてしまったのだ。だが、『嫌われ松子の一生』は、悲劇的な女の生涯をカラフルな映像と音楽で描くという、一見アンバランスそうにも見える構成なのに、すごくまとまっている。
鑑賞前に一番気にしていたことは、ハイテンションに疲れたら最後まで観るのは苦痛ではないか、ということだったが、それを微塵も感じさせなかったので驚いた。この世界観を構築した中島哲也への評価も前作より上昇した。レトロ・ニュー・ビューティフルな映像世界に見事に引き込ませてくれた。
冒頭からのハイテンションでポップな映像の中に、クラシック映画風のタイトルロールだったり、サスペンス劇場の挿入だったり、ときどき昭和テイストを感じさせてくれるのが良い。中洲のソープ店もそうだし、島津理容店もそうだし、きっちり昭和の雰囲気を出しているのだ。
その“レトロさ”と、映像世界の“新しさ”、それに加え、文学青年・八女川の電車に撥ねられた足が飛んでくるような“グロさ”、それらがバランスよくこちらに迫ってきて“ビューティフル”な世界を見せてくれた。思った以上に映画的だった。
だが、終盤に行くにしたがって失速してしまったのが残念だった。昭和を描いていた時代の勢いが、平成になるとなくなってしまった。前半の毒のこもった感じが、終盤になると控えめになり、映画をきれいにまとめようとする感が強くなってしまった。「松子は幸せだった」というような要素はもっと排除する形でも良かったと思う。
ラース・フォン・トリアーの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のような強烈な映画が好みなためか、どうもそう感じてしまったのだ。ただ、大衆娯楽映画として、多くの若い女性にも楽しんでもらおうと考えると、ファンタジックなエンディングにうまく終着させたとも思う。少し刺激を感じるユニークな映画が観たい、という女性にはすごくフィットする映画だ。その点、男性の僕は少しずれていたのかもしれない。
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