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[コメント] サイレントヒル(2006/カナダ=日=米=仏)

ホラーというジャンルにおいては、強引なゴリ押し展開が必ずしもマイナスになるとは限らない、ということを確信した。よくやった!
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭の強引な話運びに幾分戸惑いつつも、モノクロームなサイレントヒルに突入した時点で、思わず目を奪われた。何も予備知識なしに見たので、ありがちな雪や霧ではなく、灰が舞い降りる風景がとにかく新鮮だった。そして、サイレンを合図にそれが黒い雨の世界に切り替わるのも面白い。体の中から静かに蝕まれる感覚、個人的にはこの風景だけですでに3点。

そんな世界を味わい、時折「懐中電灯げっとー♪」とか、いかにもゲームなノリに小さく突っ込みを入れつつ話は進んで、いつしか醜さと罪深さが生み出す救いのない展開に歯止めがきかなくなっていく。巡査まであんな残酷な方法で殺すことあるのか、なんて疑問を持ちながらも、次の展開で、全てはラストの復讐が生むカタルシスのための引き鉄であることに気付く。

CG等を駆使して描くのは、たった一人の少女の憎悪。こんなに小さな体から噴出する憎悪や復讐心というものを、ここまで果てしなくグロテスクに具現化した映画も、実際そうそうないのではないだろうか(『キャリー』が近いかもしれない)。そのグロテスクさに戦慄を覚え、何よりも救いのなさを覚えずにはいられない。きっとその憎悪や復讐心の一部は、自分の中にも存在しているから余計戦慄を覚えるのだと思う。恐怖や笑いを通り越して、とんでもないものを突きつけられた気がした。と、ここで4点。

そして、見てはいけないものを見てしまったことで、元の世界に戻ることが出来なくなった二人。「残された良心」と呼ばれるあの女の子は、きっと元の世界に救世主として戻るはずだったのだと思う。しかし、目を開けてしまうその弱さが痛いほどよく分かる。恐怖心やよこしまな誘惑といった、「負」の要素が心の隙間に入り込んでしまったのだろう。元に戻れなくなった家族の表向きの切なさの裏で余韻のように残るのは、この現実の世界に救いが訪れることはなかった、という苦い諦念であった。

正直様々な面で、ツッコミドコロは決して少なくない。でも、そんなことを恐れずにボロボロになりながら突っ走った結果、あの異様なカタルシスが生み出されのだということを、是非強調したい。まぐれかもしれないけど。

(2006/7/29)

(評価:★4)

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