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[コメント] 太陽(2005/露=伊=仏=スイス)

その映画館の足下で、銀座線が規則正しく走っていく。
浅草12階の幽霊

その映画館の足下で、銀座線が規則正しく走っていく。

アレクサンドル・ソクーロフ監督、日本における最大のヒット作といえると思われる程の観客の入り。2006年08月11日、銀座シネパトスの光景。おめでとうスローラーナー (*1 の皆様。

15:00に銀座シネパトスへ到着するも、15:30上映開始の回はすでに立ち見となっている。日に焼けすぎたのか肌のどす黒い初老の男性客が喉がやや枯れ気味の20代の受付嬢へ座れないことに対しての嫌味を窓口越しに言いつづけている。私は17;45上映の券を手にした。

映画館の横には毛筆手書きの品書き看板が掲げられた食堂や、セックスショップが軒を連ねる。銀座。まずは受付を後に、会場までの3時間弱を消化するため、ふたたび外へ。陽が容赦なくふりそそがれる猛暑、15:30。

17:10、再来場。すでの多くの客が集合している。全員さすがに20代以上、男性8:女性2の割合。80歳より上であろうとお見受けする方も多く。しかし、なぜか紳士淑女といえるような見慣りに気をつかった観客がすくなく、また若者ではない男性の多くが額に汗を滲ませながら苦々しい顔をしている。

ロシアアヴァンギャルド映画の上映前の光景ではない。

17:30開場。17:45予告編上映、18:00頃本編上映開始。その後1時間ほどすると、会場内に観客の携帯電話のコール音が鳴り響く。19:50頃終映。

客電がふたたび灯るまで、多くの観客は最後までエンドクレジットをみつめる。私の脳はソクーロフの幻想が支配されている。昭和天皇はその時代、日本という過去の象徴であり帝国という未来の象徴であり、象徴とは記号であり人としていることを許されなかった。そして彼は日本を未来へすすめるため、妻と子供と未来をみるために、帝国を拒否し、日本の過去をなにも知らない敵国人に、そして日本国民に、自らを打ち明けたその事実、過去という時間を、幻想という危険物に昇華させ、ひとの心に滲みこませる2時間弱。

20:10、外は暗く、映画館のとなりの食堂では魚の焼ける臭いがもれている。次回上映を待っていた多くの観客が映画館へ入場を始めている。映画館を出て、徒歩10分ほどの数奇屋橋交差点の向こうに皇居がある。

銀座線、東銀座駅近くB1出入口から、帰途につく。

*1) 本作の日本における配給を請負った会社。 http://www.slowlearner.co.jp/

(評価:★5)

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