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[コメント] 太陽(2005/露=伊=仏=スイス)

ねちっこく攻めてくるカメラワーク。監督は一歩引いた視点から非常にデリケートな背景の実在の日本人、寧ろ過去には日本そのものと言っても差し支えの無かった人物を綿密に取材してファンタジックに描く。そう、これはファンタジーと言って差し支えない。
ごう

後味は良くないが。

イッセー尾形についてはすごいの一言。恐らくソクーロフが持っていきたかった方向性、というか描きたかったヒロヒトの一面を演じきるだけじゃなく、完全に血の通った人間としてヒロヒト役を演じている。実は映画の序盤にうっかり睡魔に襲われかけたのだが、それは決してイッセー尾形に関してはマイナス評価ではなく、むしろそこに映っている人間に何の違和感も感じないからこそ(加えて言えば違和感を感じなくなったそこにいるのは、オレがガキのころ散々テレビで見ていた天皇なのだから)ねちねちした撮り方に眠くなったのだ。

イッセー尾形の芝居をモノマネの一言で片付ける人も出てくるだろうが、それには大いに反論させていただきたい。そもそもイッセー尾形は少なくとも現在のスタイルの彼の舞台においてモノマネ芸など一度もしたことは無く、彼が舞台で演じてきた人間は彼が作り上げたフィクションの人間なのだから。ついでに桃井かおりに関しては、皇后役としてイッセー尾形のような演技的アプローチをあまりしていない分、その芝居に賛否両論あろうが、本編中において彼女が登場することによっての役割は十二分に果たしていたと思う。そういう意味ではやはり桃井かおりも素晴らしかった。この二人を観るだけでも観に行く価値は十分にあると思う。

ただ一つ難点を挙げるとすればエンドロール。エンドロール中の背景をCGループにしたのはいただけない。これまでの110分丁寧に映像を作り上げていたのだから何で最後にそんな大雑把にしちゃうのか。同じところを何度も鳥が飛んでは消え飛んでは消えしてるのにはかなりがっかりした。

(評価:★4)

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