[コメント] 近松物語(1954/日)
ひょんな思い違い、ずれ、若妻の世間知らずが、偶然に本物の恋に昇華してゆくくだりがホント見事。ここまで行くと、行き着くところ(死)に辿り着くのだ。愛の情念とは古今東西問わずこういうほとばしりだ。後半の道行きの、死にゆくまでの美。撮影も幽玄。しびれるね。
ただ私は、長谷川はミスキャストだと思う。当時、超人気役者だと言うのは分るが、茂兵衛は若いはつらつとした、まだみずみずしい俳優が良かったと思う。長谷川は、人工的なのだ。あの、流し目的表情は作品の格から逸脱しているし、禁欲的な感じがしない。また、誰かが言っているように中性っぽい。そこが、ふたりに本当の愛の情念が噴出していかない理由だ。
若い二人が周りを破壊してまで自分たちだけの世界に没入してゆく荒々しさがないのだ。これは長谷川の起用が作品的には裏目に出たと思う。
だが、それをマイナスにしてもなお且つ素晴らしい演出の切れ、秀逸な映像である。
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