使い方さえ間違えなければ、究極の切り札となるオフコースの「言葉にできない」。本作では一番の場面で使われている。玉山鉄二の熱演もあいまって、名シーンが生まれた。このための２時間といっても過言ではない。玉山鉄二は実質的にラストの一発勝負だが、それを見事にものにした。

その他、内容に関して話をすると、山田孝之と沢尻エリカについて、キャスティングミスの印象がぬぐえない。

なぜか。この映画、幹がしっかりしている分、ディテールの勝負であると考えるのだが、その部分について致命傷といっても良いマイナス点があるからである。

山田孝之については見る限り漫才のセンスがない。確かに、原作のミュージシャンで行くよりは現実味があるが、これで人気が出るとするのは説得力に欠ける。これなら雨上がり決死隊の宮迫博之のような芸達者な芸人を据えたほうが良かったと思う。そしてヒロインの沢尻エリカは大阪弁を自分の言葉として使いこなせていない。しゃべればしゃべるほどその不自然さに正直、がっかりした。沢尻にこだわるなら舞台を東京にして、標準語をしゃべらせたほうが良かったと思う。

それに引き換え、脇を固める俳優陣はステレオタイプな設定をそのまま演じているのだが、想像通りのものを提供するという意味で良かったと思う。

返す返すも、切ないシーンに「言葉にできない」。すさまじい破壊力である。