[コメント] トゥモロー・ワールド(2006/米)
未来を描いた映画だが、見たことのない映像を見せてくれる映画ではない。映画を見て感じるのは、既視感・・・内戦、移民たち、収容所、ホロコースト・・・未来を描きながら、私たちの目にはどこか馴染んだ絶望の姿が映し出される。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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原作を読んだ身には、原作とのあまりの違いにびっくりします。原作は管理社会や独裁者に対する怒りがメインテーマであり、必然的に主人公は管理社会と対決する存在として描かれていました。ところがこの映画の主人公はむしろ無力。もちろん知恵も力もあり、だからこそ映画の中で重要な使命を担うのだけれど、でもその力はせいぜいが一人の人をなんとか助けるほどの力でしかない。この社会を変えるような力を持っているわけではなく、たまたま出会った命をただ守ることに命を賭ける。
命を救っても、実はそれが何につながるか、人類の未来や社会の変化につながるものなのかは、主人公にも観客にもわからない。ただ、この絶望の中で希望を守ることが唯一の希望になる。そのささやかさが絶望を際だたせる。
しかし、この映画の中では、命を守ることの必然性がなんて強いことか。妊婦、そして赤ん坊の命を守るため、次から次へと命が奪われる。まあ、一つの命を救うために多くの命が奪われるお話なんてごまんとあるが、ほんとのところいつもちょっと納得いかなかったんだよね。たとえば『プライベート・ライアン』なんかもそうだね。でもこの映画は違う。なんとかして、なんとかして、この命を救う、という大命題があまりにも納得がいくので、主人公の死ですら簡単に受け入れてしまうほどだ。
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