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[コメント] トゥモロー・ワールド(2006/米)

カレル・チャペックの戯曲『R・U・R』を思い起こさせもする「人類に子供が生まれなくなった。原因は不明」という設定が陳腐さを感じさせないのは、ひとえに演出の細やかさゆえだろう。これは才能というよりも努力の問題だ。偉い。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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それはつまり、「SFと呼ぶにはあまりに現在の現実と地続きである世界」を構築してゆく(=観客に受け容れさせてゆく)視覚情報の提示に過不足がないということであり、一言で云えば「リアリズム」ということになるのかもしれないが、むろん実行するのは容易いことではない。

激しい戦闘から、赤ん坊の登場によってそれが一時停止になるまでを捉えたシークェンス・ショットについては、撮影に非常な努力を要したことは推測するに難くなく、実際私も感動したのだが、そこで長回しを用いることが効果的であるのは誰の目にも明らかだ、という意味でさほど感心はしなかった。むしろ私はクレア=ホープ・アシティの出産シーンに強く心を動かされた。「子供は希望」という安直の謗りを受けかねないテーマを掲げたこの映画に私たちが感動してしまうのは、子供の存在を単なる「希望の象徴」にとどまらず、「希望そのもの」として描いているからではないだろうか。リアルな出産のシーンを経ることで、生まれてくる子供は具体的な肉を持った存在となり、「希望そのもの」として振舞う資格を得る。それによって「子供は希望」というテーマは単なるお題目としてではなく、説得力と切迫感を持ったメッセージとして私たちに突きつけられることになる。

(評価:★4)

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