コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 麦の穂をゆらす風(2006/英=アイルランド=独=伊=スペイン=仏)

大がかりな戦闘シーンがなくても、戦争が人を、裏切り、憎み、壊してしまうことを突きつける。そして、ストーリーのすべては冒頭のハーリングシーンに集約されている。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







デミアンキリアン・マーフィとテディポードリック・ディレーニーは敵同士に分かれてハーリングをしている。クリスも声をかけられ、重要なポジションをとっていた。テディがルール違反をした後にデミアンが握手をしようと申し出るが、テディはそれには答えなかった。すでに兄弟の運命は決まっていたかのようだ。

カメラは、荒涼としているはずのアイルランドの丘を映し出すが、ゴツゴツとした岩と青々とした草に覆われたそれらは、国の気概と誇りを表すべく目に飛び込んでくるのだ。

誰と戦うかよりも、何のために戦うか。 これは、映画で何を伝えたいかというローチの明確な意思でもある。

シナリオで上手いと感じたのは、銃撃の訓練中に、クリスが、弾が命中した煙草を「もう吸えないじゃないか」というのだが、こういう的外れな発言をする軽い男として描くことで、裏切り者を揶揄しているところだ。

また、デミアンがクリスを殺害後、母親から言われた言葉を、ラストではシネードがテディに吐く。この苦しみは綿々と続いてしまうということだ。

それぞれの意思が、身近なリアリティとして迫ってきて、強烈な印象を残す。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。