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[コメント] 犬神家の一族(2006/日)

旧作の高峰三枝子坂口良子草笛光子、そして大野雄二は神だった! 新作の良かった点は→ 
3WA.C

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







《新作で良かった点》

・佐清が展望台でノックアウトされていたことの真相が30年振りに解明されたこと。

・はるが金田一の見送りに用意した「アレ」が、「う~む」と思いつつ観ていた私に穏やかな気持ちを生ませたこと。

・いまやすっかり気の良いオバサンである松坂慶子が、往年のキツい表情を取り戻していたこと。

・音楽を必要最小限に抑えて、役者の芝居で映画を見せようという心意気。

・「横溝・市川・石坂金田一」入門編として最適。

・松子が斧を振りかざす時に言う「しずまーっ!」。

・「佐清君が警察に捕まりました」「・・・佐清、どこにいるんです?」を「・・・佐清、どこにいたんです?」に変えたこと。

《それでも言いたい番外編》

尾上菊之助の目元が往年のピーターそっくりだったこと。

・大山神官が野々宮家と関係のある人じゃ無くなっていること。

・神官が金田一に「日記」を手渡すとき、旧作では「日記」を見ないようにしながら渡すという細かい芸があったが、新作ではめくりながら手渡すこと。

・スリッパを叩くのは、埃を飛ばすためだぞ。何のために叩くのかわかってるのか?と問いつめたくなること。

尾藤イサオが殺人事件現状の様子を説明しているにもかかわらずニヤニヤと嬉しそうにしていること。

萬田久子は2時間ドラマ女優であること。

冨司純子が「古舘しゃん、早く遺言状を」と言ったとき、つい「犯人しゃん、出てらっしゃい!」を思い出してしまったこと。

・「わが告白」が真新しかったこと。

旧作と比べて、テンポが格段に悪い。 あと、コミカルな部分はまだしも中核となる話(主に犬神佐兵衛に関する話)をはしょりすぎ。だから事件の背景が全くわからなくなってしまっている。ついでに言うと、セリフは旧作のまんまだから、前後のつながりが「?」になってるところが多々。例えば・・・

1)古舘弁護士が猿蔵と犬神家の関係を説明するところは旧作の辻萬長のセリフをそのままあてこんでいるので、言葉遣いが「~です」から「~だ」というように変わり破綻が生じている。

2)最後のシーン、古舘弁護士は旧作で用意した「心付け」を渡そうとしない。しかし、金田一のセリフは旧作そのままであるから「5人の死者を出さずに済んだのではないかと申し訳なく思っているのです。どうぞ勘弁してください。」の「勘弁してください」が何に対してなのかが「?」である。

3)梅子が松子親子が怪しいと署長に告げ口するシーンが丸ごとカットされているのに、2度目の手形合わせの席で松子が「私達親子の仕業と言われるのは心外だ」というセリフが残っているため、これまた「?」である。

また旧作では丁寧に描かれていた部分(三姉妹の菊乃襲撃や金田一と犯人の対決場面、「佐清、この薄情な人たちに仮面をめくっておやりッ!」の場面など)が非常にアッサリ(多分1シーンの時間も短縮されている)。 それなのにテンポが悪いというのはなぜだろうか?セット撮影の多さからくる閉塞感が原因か?それとも、ストーリーだけを追う形になって「映画的」な画で魅せるカットを悉く省いたためか?

しかしながら犬神の大広間をはじめとするセットは豪華。そして市川映画の命ともいえる照明も美しい。 しかもこの映画を2006年の暮れに、しかも正月映画として観られることは幸せだ。

映画のデキとしては『天河伝説殺人事件』『八つ墓村』と似たりよったりだが、 石坂浩二の声がすべてを帳消しにする。そんな2006年版『犬神家の一族』。

(評価:★4)

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